コラム

大混戦の民主党予備選、結局笑うのはトランプかも

2019年03月07日(木)19時00分

2つ目は、民主党支持者の中には「女性と有色人種」への期待感が強いということがあります。ヒラリーの果たせなかった「女性大統領」という夢を実現したい、オバマの作った「アメリカの多様性」の伝統を継承したい、そして何よりもトランプ政権の4年間とは全く別の時代を作りたいという方向性は、非常に強いのです。この思いは、結果的に正副大統領候補の組み合わせに影響を与えると思われます。

3つ目は、中道と左派それぞれに困った事情を抱えているということです。まず、中道の場合、本格候補がバイデン、クロブチャーという2人しかいないという問題があります。他にも大勢が名乗りを上げていますが、泡沫候補ばかりです。

また左派の場合は、ハリス、ウォーレン、ブッカーの3人が「ドングリの背比べ」になっているだけでなく、29歳のアレクサンドリア・オカシオコルテス議員(AOC)が主張している政策パッケージの「グリーン・ニューディール」を支持してしまっています。つまり自前の政策を持っていないわけで、いくらミレニアル世代におけるAOCのカリスマ的人気に頼るにしても、大統領を目指すにしてはややお粗末です。

予備選というのは筋書きのないドラマです。思わぬ人物が旋風を起こしたり、無名の人物が急成長したりする可能性はいくらでもあります。ですが現時点では、ちょうど働き盛りの年齢の候補がカリスマ性をメキメキと発揮して輝くとか、女性や有色人種の候補で広範な支持を獲得できそうな人物が「ポスト・トランプ」時代への期待感を背負うといったストーリーは生まれていません。

そんな中で、6月には予備選のディベートが始まりますが、現在の雰囲気では「トランプへの批判をどれだけ大声で言えるのか?」という争いになってしまいそうです。仮にそうなると、選挙戦自体のクオリティが下がってしまい、結局はトランプの再選を許す可能性が出てきます。

すでに2020年11月を目指した長距離レースは始まっているのです。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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