最新記事

その一杯が長寿をつくる──家康も愛した、スーパーで買える「陣中インスタント食品」の正体

2025年7月9日(水)18時39分
笹間 聖子(フリーライター、編集者)*PRESIDENT Onlineからの転載
その一杯が長寿をつくる...健康オタク・家康も食べていたスーパーで気軽に買える「インスタント食品」とは

Goskova Tatiana-shutterstock-

<徳川家康が「平均寿命の2倍」も生きた理由のひとつは、毎日口にしていたあの発酵食品だった。戦場にも携帯され、現代では風邪のときや運動後にもおすすめされる「長寿食」の正体とは──>

徳川家康は、平均寿命が37、38歳の時代に、73歳まで生きたことで知られる。長寿の秘訣は何だったのか。「日本発酵文化協会」上席講師の藤本倫子さんは「食生活へのこだわりが長生きした理由のひとつだろう。家康の食生活は、科学的に理にかなっている」という。ライターの笹間聖子さんが聞いた――。

「北海道から沖縄まで」地域ごとの味噌がある

味噌のルーツは、紀元前の中国・周にあるといわれている。冷蔵庫のない時代、肉や魚を保存するために塩を混ぜた「肉醤」「魚醤」などの発酵食品が生まれ、農耕が広まるにつれ、穀物と塩を混ぜた「穀醤」が誕生。その製法が奈良時代、仏教とともに日本に伝わったのが日本の味噌のはじまりだ。

現代では日本の味噌は、米味噌、豆味噌、麦味噌、これらを合わせた調合味噌の4つに分類される。だが、発酵食品の正しい知識や楽しみ方を普及している「日本発酵文化協会」上席講師の藤本倫子先生によると、細かく見れば各都道府県に1つ以上の種類があるという。


地域ごとに特性もあり、「米味噌」は北海道から沖縄まで全国で作られているが、「麦味噌」は九州、四国、沖縄に多い。なぜなら、稲作は日本全国で行われていたが、麦は基本、稲の裏作に使われる作物。温暖な地域でなければ作れないからだ。

newsweekjp20250709083118.jpg

図画像提供=藤本さん「日本発酵文化協会」上席講師の藤本倫子さん

じつは作り方の「正式なルール」がなかった

味噌の作り方にもそれぞれこだわりがある。たとえば、山梨県の甲府市などで作られる「甲州味噌」には、「米麹と麦麹を一緒に入れないといけない」というルールがある。一方、長野県を中心に作られる「信州味噌」の製法では、一番先に大豆と塩を混ぜる。そして、そこまで明確でなくとも、米麹と塩の割合や温度に少しずつ違いがあり、たとえ隣の県で同じように作っていても、できあがる味噌は異なるそうだ。

このように日本で味噌の食文化が多彩になった背景には、現代に至るまで、正式な味噌づくりのルールがなかったことが大きく関係している。しかし2022年3月、海外産の粗悪な味噌の増加から国産味噌を守るために、JAS規格が設けられた。それまで認められていた自由な作り方に一定の規制がかかったため、何百年も歴史がある味噌蔵の味噌が規格に当てはまらず、「味噌」と名乗れないような弊害も起きている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局

ワールド

ポーランドの2つの空港が一時閉鎖、ロシアのウクライ

ワールド

タイとカンボジアが停戦に合意=カンボジア国防省
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中