コラム

オバマ大統領の広島訪問が、直前まで発表できない理由

2016年04月26日(火)16時45分

 この問題には、イヤな過去の事例もあります。例えば1995年に、ワシントンのスミソニアン博物館の中にある「国立航空宇宙博物館」が、原爆投下に使用された米軍機「エノラ・ゲイ」を展示する際、原爆被害や歴史的背景を含めての展示を計画しました。

 この情報、つまり被害や歴史的背景を含めた展示がされる計画が伝わると、退役軍人団体などから強い抗議が寄せられたのです。その結果、賛否両論が激しく衝突して、結果的には詳しい説明をカットした「機体の展示」だけになった経緯があります。

 もちろん、この事件からは21年が経過していて、第二次大戦を経験した世代の影響力は当時とくらべて大きく低下しました。反対に冷戦終結後に生まれた新世代の間では、「大戦末期の原爆使用は正当化できない」という意見が大多数になっているというデータもあります。

 ですが、仮にも合衆国大統領が、その在任中の成果を残すために行う「核廃絶へのメッセージ発信」が、事前に賛否両論の渦に巻き込まれることは、オバマ政権としては何としても避けたいのです。ですから、この件に関しては、実現するにしても直前の発表になるのはやむを得ないでしょう。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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