コラム

【保存版】平成30年間の新卒採用:人気企業、求人倍率、新入社員タイプ...

2019年04月24日(水)19時00分

平成3~4年:ソニーが大学重視採用に一石を投じた

ソニーは平成3年、大学名不問・職種別採用を打ち出した。大学名を聞かずに採用するなど世間はにわかに信じがたかった時代。その職種に必要な資質や能力をあぶり出し、どうすれば大学名が分からなくても見極められるのかを考え抜いた採用方法は、世間の話題になった。

大学入試に通ったという知力(ポテンシャル)重視の採用から、個を見極めようという動きが少し始まった時代だ。

人気企業ランキングでは、文系で上位が商社から旅行業界へと変化し始める。

matsuoka190424-ch3.pngmatsuoka190424-ch4.png

平成5~8年:バブル崩壊が雇用市場にも本格的に影響

完全失業率は平成4年から上がり始め、大卒の求人倍率は平成5年に2.0倍を割り込む。

バブル崩壊の影響が、雇用市場にも出始めた。この頃から完全失業率は悪化し続ける。新卒採用も環境が激変し、平成6年には、筆者が属していた「就職ジャーナル」が生み出した「就職氷河期」が新語・流行語大賞の審査員特別造語賞を受賞。内定を複数取れる学生と、なかなか取れない学生との2極化が進み始める。

人気企業ランキングは、理系でNEC、ソニー、富士通の3強が崩れ始め、資生堂、松下電器産業、石川島播磨重工業がトップ3内に顔を出す。

matsuoka190424-ch5.pngmatsuoka190424-ch6.pngmatsuoka190424-ch7.pngmatsuoka190424-ch8.png

平成9~11年:大手企業が中高年を大リストラ

平成9年にはついに北海道拓殖銀行が破綻し、山一證券が自主廃業に追い込まれた。「社員は悪くない」という山一證券の野澤正平社長の映像は、今でも時々テレビで流れる。

大手企業は中高年のリストラ(Restructuring:本来は事業の再構築)という名の人員削減を進める一方で、将来のために新卒採用には力を入れていた。

しかし、それを上回る志望者が押し寄せたので、大卒求人倍率は1.45倍だが、従業員規模別に見ると、大手企業(従業員1000人以上)では0.36倍、中堅・中小企業(従業員1000人未満)では2.73倍と大きな開きがある。翌平成10年には、大手0.54倍、中堅・中小3.11倍と差はさらに開く。

この時代は、大手に行きたくても行けず、景気が回復してからの「リベンジ転職」潜在層を多く生み出す結果となった。平成11年からは、中堅・中小企業の採用意欲も下がり、求人倍率は全体に下がってゆく。

人気企業ランキングでは、1位が文系でNTT、理系でソニーの時代がしばらく続く。

matsuoka190424-ch9.pngmatsuoka190424-ch10.pngmatsuoka190424-ch11.png

平成12~14年:就職したくてもできずに非正規の道へ

平成12年、大卒求人倍率がついに1.0を切り、就職したくてもできない学生たちはフリーターや派遣などの非正規社員にならざるを得なかった。非正規社員に多くの教育投資をする企業は少なく、教育の機会の差がその後の人生にも影響を与えることになる。

平成13年から、ついに完全失業率が5.0%を越える。

人気企業ランキングでは、平成3年設立の携帯電話会社NTTドコモが10年の時を経て、平成13年に初めてベスト3に顔を出す。

matsuoka190424-ch12.pngmatsuoka190424-ch13.pngmatsuoka190424-ch14.png

プロフィール

松岡保昌

株式会社モチベーションジャパン代表取締役社長。
人の気持ちや心の動きを重視し、心理面からアプローチする経営コンサルタント。国家資格1級キャリアコンサルティング技能士の資格も持ち、キャリアコンサルタントの育成にも力を入れている。リクルート時代は、「就職ジャーナル」「works」の編集や組織人事コンサルタントとして活躍。ファーストリテイリングでは、執行役員人事総務部長として同社の急成長を人事戦略面から支え、その後、執行役員マーケティング&コミュニケーション部長として広報・宣伝のあり方を見直す。ソフトバンクでは、ブランド戦略室長、福岡ソフトバンクホークスマーケティング代表取締役、福岡ソフトバンクホークス取締役などを担当。AFPBB NEWS編集長としてニュースサイトの立ち上げも行う。現在は独立し、多くの企業の顧問やアドバイザーを務める。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ホンジュラス大統領選、トランプ氏支持のアスフラ氏勝

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、幅広い業種で買い優勢

ワールド

エプスタイン文書、さらに100万件か 黒塗りで公開

ワールド

ウクライナ、GDPワラント債再編手続き完了 デフォ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story