コラム

強硬右派ポピュリスト政党「改革英国」、支持率が労働党に1ポイント差...英政治はなぜ「崩壊」した?

2025年01月14日(火)18時16分

英国は物価上昇と景気後退が同時進行するスタグフレーションの症状を呈する。この状況を打破するには英中銀・イングランド銀行が動くしかないものの、粘着質のインフレが利下げを阻む。リーブス氏は手足を縛られたまま、溺死寸前の状態だ。

スターマー、リーブス両氏は人工知能(AI)と中国に突破口を見出そうとしている。英国独自のAIモデルを開発、2030年までに公的管理下にあるAIコンピューティングパワーを20倍に増やすとともに、教師の授業準備支援など公共部門でAIをフル活用する青写真を描く。

労働党支持者からも見限られる

リーブス氏は訪中し何立峰副首相と会談。世界第2の経済大国・中国と英国の関係は「意見が対立する分野では率直でオープン」な一方「安全な貿易と投資の機会を見つける」という点で現実的だと強調した。香港の民主派弾圧で悪化した両国関係修復のため自らすり寄った格好だ。

24年7月の総選挙で労働党が411議席(定数650)という地滑り的勝利を収めてから半年。労働党支持者のうち次の総選挙でも同党に投票すると答えたのは54%に過ぎず、政党支持率では労働党26%、改革英国党25%、保守党22%、自由民主党14%、緑の党8%となった。

18~24歳の若者層では19%が次の総選挙ではファラージ氏の改革英国党を支持すると答えており、保守党を支持する人は5%。しかし労働党は若者層では最も人気のある政党で支持率は36%、緑の党は22%で、若者のリベラル志向は依然として強いことが確認された。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏「キーウに最大規模の攻撃」、世界遺産

ビジネス

韓国、対米交渉担う通商交渉本部長に呂翰九氏 文政権

ワールド

台湾、中国スパイ容疑で4人起訴 元高官との情報

ビジネス

アングル:超長期金利に低下圧力、財務省対応で思惑 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 4
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 7
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 8
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 9
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 10
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story