コラム

いよいよ「崖っぷち」のマクロン仏大統領...解散・総選挙なら強硬右派「国民連合」が議席倍増か

2025年08月29日(金)19時32分
フランスのバイル首相とマクロン大統領

フランスのバイル首相とマクロン大統領(2025年7月) LUDOVIC MARIN/Pool via REUTERS

<フランスのバイル首相は「債務に押しつぶされるかの瀬戸際」として歳出削減の痛みを伴う改革を訴えるが、国民の72%が首相辞任、67%が大統領辞任を求めているとの調査結果も>

[ロンドン発]「崖っぷちに立たされ、債務に押しつぶされるかどうかの瀬戸際」と438億ユーロの歳出削減に不退転の決意で臨むフランソワ・バイル仏首相は8月25日、9月8日に国民議会(下院)を招集し内閣信任投票を行うようエマニュエル・マクロン大統領に要請した。

通常、内閣信任投票は政府が提案する予算案に賛成か否かを問うものだ。しかし、バイル首相は緊縮予算案の中身ではなく「フランスの財政状況は危機的で国家非常事態。歳出削減の痛みを伴う改革は避けて通れない」と根本的な問いを国民議会に突きつけた。

フランスの政府債務残高は国内総生産(GDP)比で114%に達し、欧州連合(EU)内ではギリシャとイタリアに次ぐ水準。「債務への依存は慢性化している。今年、政府の利払い費は660億ユーロに達し、教育費か国防費を上回る恐れがある」とバイル首相は危機感をあらわにする。

昨年の解散・総選挙で政情不安が一段と強まる

フランスの10年物国債の利回りは今、かつて欧州債務危機の震源地となったギリシャのそれを上回る。バイル首相の政治的大博打について市場は「バイル内閣の終わり」と受け止め、一時、ソシエテ・ジェネラル株は12%近く、BNPパリバ株も10%超も下落した。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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