コラム

トランプ前大統領が内々に語る「ウクライナ終戦」の秘密計画...日本にも危機が及ぶ「戦争の終わらせ方」

2024年04月09日(火)17時31分

同盟国が応分の負担をしないならロシアに侵略を促す

「NATOは1つの同盟国への攻撃はすべての同盟国への攻撃という唯一の厳粛な約束の下に創設された。その土台の上に歴史上最も強力で成功した同盟を築いてきた」とストルテンベルグ氏は強調するが、トランプ氏は同盟国が応分の負担をしないならロシアに侵略を促すとほのめかす。

「支援の遅れは戦場に影響を及ぼす。ウクライナへの軍事支援は長期にわたって信頼と予測可能性を確保しなければならない。自発的な拠出を減らしNATOのコミットメントに、短期的な拠出を減らして複数年の誓約に依存するようにしなければならない」(ストルテンベルグ氏)

ストルテンベルグ氏は4月7日、英BBC放送の前政治部長ローラ・クエンスバーグ氏のトーク番組に出演し「ウクライナが一定の独立国家として勝ち残るためにはコストがかかる。そのコストから私たちは逃れることはできない」と1000億ユーロ基金について理解を求めた。

前線の主導権は現在、ロシア軍が握る。「プーチンは戦場で勝てると信じている。しかしプーチンが戦場では勝てないこと、ウクライナが必要とする限り私たちはウクライナの側に立つ用意があることをプーチンに突き付ける必要がある」

中国はロシアの戦争経済を支えている

戦争の大半は交渉のテーブルで終わる。交渉は戦場の状況と密接に関係している。プーチンはウクライナに軍事的な圧力をかけ続けることで目標を達成できると考えている。「ウクライナが民主主義国家として勝利するためには軍事的支援を与えることだ」(ストルテンベルグ氏)

「最終的にウクライナがどのような妥協をするのかを決めなければならない。その前にウクライナが交渉のテーブルで受け入れ可能な結果を出せるようにする必要がある。安全保障はローカルではなくグローバルなものであり、ウクライナ戦争はそれをはっきりと示している」(同)

ストルテンベルグ氏によると、中国はロシアの戦争経済を支え、国防産業の主要部分を供給する。その見返りにロシアは中国に未来を差し出す。イランはドローンやその他の軍事装備を提供する。その見返りにロシアから技術を提供され、ミサイルや核開発計画を進める。

「北朝鮮からロシアへ膨大な量の何十万発もの弾薬がそのままウクライナとの戦争に供給されている。ロシアは北朝鮮に技術を提供している。アジアで起こることは欧州にとっても重要なのだ」(ストルテンベルグ氏)。米国が手を引けば欧州だけでウクライナを支えるのは難しい。

ウクライナ戦争は重大な岐路に立たされている。トランプ氏が米大統領に返り咲き、ウクライナが屈辱的な停戦条件をのまされれば、武力行使を厭わない権威主義国家が増長する。ウクライナ戦争は日本にとって、もはや対岸の火事で済まされないのだ。

ニューズウィーク日本版 ジョン・レノン暗殺の真実
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月16日号(12月9日発売)は「ジョン・レノン暗殺の真実」特集。衝撃の事件から45年、暗殺犯が日本人ジャーナリストに語った「真相」 文・青木冨貴子

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、FRB議長が利上げの可能性

ワールド

米、ベネズエラ沖でタンカー拿捕 一段と緊張高まる公

ビジネス

〔情報BOX〕パウエル米FRB議長の会見要旨

ビジネス

FRBはもっと利下げできたはず=トランプ大統領
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 9
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 10
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story