コラム

中国BYD「低価格EV」は英国市場の黒船か、脱炭素化の救世主か...英自動車産業「絶滅の恐れ」の声も

2025年06月10日(火)20時30分
中国BYDの低価格EVが英国市場を変える

CFOTO/Sipa USA via Reuters

<アメリカやEUとは違い、中国製EVに追加関税をかけずに門戸を開いた英国。自動車産業の構造が大きく変わるなか、中国製EVには安全保障上の懸念も指摘される>

[ロンドン発]中国の電気自動車(EV)メーカー、BYDが低価格帯の小型ハッチバック「ドルフィン・サーフ」(中国ではシーガルとして販売)が欧州市場で売り出される。英BBC放送によると、英国での販売価格は1万8000ポンド(約353万円)前後とみられるという。

独フォルクスワーゲンの同型車種「e-UP!」が2万5585ポンド(出所:electrifying.com)なので破格の価格だ。昨年、バイデン米政権が中国製EVの輸入関税を25%から100%に引き上げ、欧州連合(EU)も自動車への基本関税10%にプラスして最大35.33%の追加関税をかけた。

しかしEUから離脱した英国は基本関税10%だけで中国製EVに特別の措置を講じなかった。BYDは昨年、米国のテスラを抜いて世界で最も売れているEVメーカーとなり、BYD英国の販売責任者はBBCに「10年以内に英国市場でナンバーワンになりたい」と意気込みを語っている。

英自動車産業は絶滅の道をたどるのか

英国自動車製造販売者協会(SMMT)によると、今年に入って新車販売台数は完全なゼロ・エミッション車(ZEV)のBEV(バッテリー電気自動車)が17万7487台(昨年同期比33.4%増)。新車販売市場に占めるBEVのシェアは16.1%から20.9%に増えている。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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