コラム

香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉

2025年12月13日(土)19時02分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)
中国

©2025 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN

<11月末に起きた香港のマンション大火災で世界が目撃したのは、かつて自由を謳歌した「アジアの宝石」の完全な終焉だった>

11月26日、大規模修繕工事が行われていた香港・大埔(タイポ)区の高層住宅群「宏福苑(フォーチュン・ガーデン)」で大火災が発生した。建物外部に設置されていた防護ネットに火が燃え移り、住宅群8棟のうち7棟へと瞬く間に拡大した。死者は150人以上。丸2日間燃え続け、「世紀の大火」と呼ばれている。

この火災は香港社会の制度腐敗をあぶり出した。修繕工事が始まった2024年7月以降、香港の住民たちは工事に使用されているネットや保護シートなどが防火基準に適合していないと繰り返し通報していた。使用されていたコストの低いネットは「火災のリスクが極めて高い」と警告されていたにもかかわらず、政府部門も施工会社も対応せず放置した。


発生時に住宅群全体の火災報知システムが正常に作動していなかったことも判明した。担当の施工業者は過去に度重なる訴訟・違反歴があったにもかかわらず、高額での落札に成功しており、汚職や利益供与の疑惑が浮上している。公共の安全が利益構造と結び付き、そのリスクが爆発したとき、結果は必然としての「人災」となる。

制度腐敗のもう1つの危険な特徴は、情報統制である。

火災発生後、市民は「独立調査委員会の設置」「政府担当者の責任追及」「契約・審査・資材調達記録の公開」を呼びかけたが、程なく香港警察は呼びかけた者を国家安全条例違反容疑で逮捕した(香港政府は12月2日、独立委員会設置を表明)。

プロフィール

風刺画で読み解く中国の現実

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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