東京都世田谷区の公立小学校に通う児童(と教員)の日常を1年間にわたって追った2023年のドキュメンタリー作品『小学校〜それは小さな社会〜』は、とても素敵な映画だった。
国内のみならず世界各国で上映され、同じ素材から製作された短編『Instruments of a Beating Heart』は第97回米アカデミー賞短編ドキュメンタリー部門にノミネートされたが、十分に納得できる話である。
近づき過ぎず、離れ過ぎもしない子どもたちとの距離感、そして全体に貫かれた柔らかな空気感が心地よい一方、適度な深みも感じさせてくれた。
そのため私は一度だけでは飽き足らず、結局は3回ほど観てしまった。
そんな私が同作の監督による著作『それでも息子を日本の小学校に通わせたい』(山崎エマ・著、新潮新書)に関心を抱いたのも当然の話だった。
なぜこれらの作品はここまで評価されたのか。それは、日本の小学校が世界でも稀に見る独自の教育を実践しており、その姿が国際的な関心を集めているからだと思います。
日本の小学校では、国語や算数などのいわゆる教科学習だけでなく、掃除、給食、係活動や行事など、日々の生活そのものが教育の一環として位置づけられています。私たちからすれば「当たり前」のことですが、小学生が学校で掃除をしたり、給食を配膳する様子を収めた動画が「世にも珍しい光景」として海外のネット上で“バズった”こともありました。(「はじめに」より)
日本の小学校(特に公立)に通った人には、理解できる話だろう。しかも著者はイギリス人の父と日本人の母のもとに生まれ、大阪の公立小学校、神戸のインターナショナルスクールを経てアメリカの大学に留学したという経歴の持ち主である。
