アメリカで高タンパク質食への関心が高まる中、普段あまり体を動かさない成人にとって、タンパク質を過剰に摂取することが、かえって健康に悪影響を及ぼす可能性があることが新たな研究で示された。タンパク質を控えめにすることが、一部の人にとっては、より健康的に年齢を重ね、長生きする助けになるかもしれないという。
学術誌『セル・プレス・ブルー』に掲載されたこの論文は、酵母から昆虫、マウスなどげっ歯類に至るまで、さまざまな生物を対象にした350件以上の研究を検証した。その結果、タンパク質の総量を減らしたり、タンパク質を豊富に含む食品に含まれる特定のアミノ酸を控えたりすることで、代謝が改善し、細胞の損傷が抑えられ、長寿に関わる生体内の仕組みが活性化される可能性があると結論づけた。
この研究結果は、国を挙げたタンパク質推進の動きに一石を投じるものだ。米保健福祉省のロバート・F・ケネディ・ジュニア長官は今年、タンパク質を重視した最新の食事ガイドラインを打ち出した。連邦政府の推奨値も、成人の1日あたりの摂取目安を体重1キロあたり約1.2〜1.6グラムへと引き上げた。これは、従来の推奨量(体重1キロあたり0.8グラム)を大幅に上回る。
もちろん、タンパク質は筋肉の形成や組織の修復、身体の回復に欠かせない栄養素だ。高タンパク質の食事は、筋肉量を維持し、加齢に伴う筋肉量の減少(サルコペニア)の予防に役立つため、アスリートや高齢者に推奨されている。しかし今回の研究は、比較的運動量の少ない成人が必要以上にタンパク質を摂り続けた場合、長期的な健康を損なうリスクがあると示している。
論文の共同著者でウィスコンシン大学マディソン校のダドリー・ラミング教授は「タンパク質が筋肉の成長や、運動する人の運動への反応に有益であることは紛れもない事実だ」と述べる。「しかし、多くの人は比較的運動不足であり、実際に必要な量を上回るタンパク質を摂取している可能性が高い。それはおそらく健康に悪影響を及ぼす」
本研究は、アンチエイジング分野で長年注目されてきた「カロリー制限」にも触れている。以前から、栄養失調にならない程度に摂取カロリーを抑えることで、多くの動物で寿命が延び、加齢に伴う病気のリスクが下がることが示されてきた。研究著者らによると、タンパク質を減らすだけでもカロリー制限と似た体内変化が起きるため、過度な食事制限をしなくても同様のメリットを得られる可能性があるという。