【チャイナ・トラック】ファッション業界に巣食う中国犯罪組織を巡る裁判、イタリアで難航
欧州ファッション業界の物流を支配する中国人犯罪組織を巡るイタリアの裁判が、書類の紛失や通訳者の辞任など数々の不手際により難航している。写真は繊維企業の捜査を行う財務警察。提供写真(2025年 ロイター/Guardia di Finanza Press Office)
欧州ファッション業界の物流を支配する中国人犯罪組織を巡るイタリアの裁判が、書類の紛失や通訳者の辞任など数々の不手際により難航している。検察は、業界支配を守るために妨害行為が行われている可能性を疑っている。
「チャイナ・トラック」と呼ばれるこの裁判は、2010年に中国人男性2人が刃物で殺害された事件をきっかけに始まった。イタリア・トスカーナ州のプラートを拠点に、数十億ユーロ規模に上る欧州衣料産業の物流を支配しているとされる違法ネットワークの解体が目的だ。
ところが裁判では、イタリアの司法制度が国際的な組織犯罪に対処する際の壁が浮き彫りになった。国内マフィアとの闘いに有効だった手段が通用しないのだ。
ロイターは、イタリアの幹部マフィア捜査官2人に加え、繊維労働者、労働組合代表、弁護士ら計6人以上に取材した。
長年マフィア対策を手がけ、現在はプラートの主任検察官として中国人犯罪組織の訴追を主導するルカ・テスカローリ氏は「中国コミュニティや中国当局による干渉の疑いがある」と語った。
同氏の発言について、ローマの中国大使館はコメント要請に応じなかった。中国外務省は声明で「原則として、中国政府は一貫して海外在住の中国人に現地の法律と規則を遵守するよう求めている」と説明した。
裁判を巡っては9月、通訳者が審理の際に出廷せず、中国に帰国していたことが分かった。彼女が作成した記録は「理解不能で使いものにならなかった」とテスカローリ氏は言う。通訳者が姿を消す事例は2度目で、トスカーナ州内で新たな中国語通訳者は見つかっていない。検察は、何者かが裁判を潰そうとしている可能性があるとして捜査を開始した。
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