コラム

南北アイルランド「統一」を問う国民投票に備えよ...「英国のEU離脱」の苦い経験から学ぶべきこと

2025年12月09日(火)18時37分
南北アイルランドの統一を問う国民投票の可能性

Alexander Lukatskiy/Shutterstock

<南北アイルランドの統一を問う国民投票の実施への機運は高まっているが、「感情の対立」を避け「現実的選択」をすべきとの声が上がっている>

[ロンドン発]アイルランドのフィンタン・オトゥールと英・北アイルランドのサム・マクブライドという南北を代表するジャーナリストが共著『南北アイルランド統一への賛否』(筆者仮訳)を出版し「感情の対立」を避け「現実的選択」をするよう呼びかけている。

ロンドン外国特派員協会(FPA)で質疑に応じたオトゥール氏は「生きているうちに統一を問う国民投票は起こらないと思っていたが、今はおそらく起こると考えている」と語る。1998年ベルファスト合意で国民投票を呼びかける権限は英・北アイルランド担当相に与えられている。

いつ、どのような基準で実施するかは明記されておらず、極めて恣意的に解釈されうる。投票は南北両方で実施される。統一賛成派が勝てば不可逆的に英国の現在の形は終わる。少なくとも7年経てば、北アイルランド側では再度、国民投票を行うことができる。

統一を急げば治安空白に直面する恐れ

マクブライド氏が強調するのは統一コストの大きさだ。アイルランド側の負担は年25億〜200億ユーロと推計され、20年続けば最大4000億ユーロに達する可能性がある。北の福祉、医療、給与体系を南に合わせれば巨額の財政負担が生じ、南の有権者の抵抗を招くのは必至。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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