コラム

学歴はプロパガンダへの盾にならない...陰謀論に流されず民主主義を守るために必要なこととは

2026年02月24日(火)15時00分
ウクライナ戦争に関するフェイクニュースのイメージ

ウクライナ戦争についてはロシア発のフェイクニュースが多く確認されている Viacheslav Lopatin-shutterstock

<人々を混乱させる偽情報は「信頼できる仲介者」や「アルゴリズム」を通じて伝えられる>

[ロンドン発]英国の新興シンクタンク「レジリエンス&リコンストラクション(R&R)」はウクライナ戦争を巡る偽情報と英国の民主主義への影響に関する報告書『偽情報と英国の民主主義、ウクライナ・ロシアへの態度』を発表した。

【動画】影響は選挙にまで...フェイクニュースとの戦いの最前線

R&Rは文化分析、偽情報研究、民主主義の強靭性に関する独立した専門家のイニシアチブだ。偽情報がもたらす制度的侵食に対抗することを目指している。報告書はボットネットワークやデータの流れを分析するのではなく、有権者のレンズにフォーカスしている。


調査はこれまでの主要政党だった労働党、保守党、自由民主党だけでなく、新興政党リフォームUK(改革英国)の支持者、極右活動家トミー・ロビンソン氏の信奉者、陰謀論者、ロシアのプロパガンダを追う者まで8つの異なるグループを対象に行われた。

陰謀論者の中には最も明晰で高学歴な人もいた

創設者の一人、スティーブン・レイシー氏は「教育や知性はプロパガンダに騙されないための盾にはならない。ロシアのプロパガンダを追う者の多くは学位取得のために勉強しており、陰謀論者の中には最も明晰で高学歴な人々もいた」と指摘する。

報告書は英国における公的機関への信頼が歴史的な低水準(政府への信頼度は27〜30%)にあることに注目する。こうした制度への「信頼の欠如」が外国からの偽情報が浸透する温床となっている。特に重要なのは「偽情報のエコシステム」だという。

これは直接的な説得ではなく、ソーシャルメディアのアルゴリズムによる反復、トーン、感情的な共鳴を通じて人々が受動的に物語を吸収していくプロセスを指す。別の創設者で文化戦略家のオーラ・ムハ博士は、この現象を「増幅器」と呼ぶ。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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