コラム

学歴はプロパガンダへの盾にならない...陰謀論に流されず民主主義を守るために必要なこととは

2026年02月24日(火)15時00分

アルゴリズムはあなたの感情を再確認させる

「アルゴリズムはあなたがクリックしたものを提供し、それがあなたの感情を再確認させる。たとえ自分が何をしているか自覚していても、気づかないうちに知覚に影響を及ぼすのだ。これが事実とは何かという一般的な認識を歪めてしまう」とムハ博士はいう。

報告書は、ロシア発の言説が直接的なチャンネルではなく、英国や米国の仲介者を通して浸透していく「ナラティブの洗浄」の仕組みを解き明かす。例えば前出のロビンソン氏や米保守派政治コメンテーター、タッカー・カールソン氏といった人物が「信頼できる仲介者」になる。


ロビンソン氏らがロシアの主張を難民の受け入れ問題やエリートへの不信など英国固有の文脈に翻訳して届けることで「常識」として英国のオーディエンスに受容される。ウクライナ戦争の長期化に伴い、戦争に関する英国市民の基礎知識も著しく風化している。

ブチャの虐殺やマリウポリの包囲戦も記憶から薄れる

ロシアとの戦争が2014年に始まったことを知らず、ブチャの虐殺やマリウポリの包囲戦も記憶から薄れている。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領について主流派は「英雄」と見る一方、周辺層では「腐敗した西側の傀儡」というプロパガンダが浸透していた。

報告書はウクライナへの支持を持続させ、民主主義を守るための3つの柱からなる政策ロードマップを提示している。

(1)説明責任、ロシアに代償を払わせる
凍結された資産の没収や戦犯の追及を可視化し、市民の公平感を満たす必要がある。

(2)信頼性、徹底した透明性
政策の目的やコストを率直に説明し、政府への信頼を再構築しなければならない。

(3)強靭化、メディア・リテラシーへの投資
情報の混乱、冷笑主義、断片化、無責任、無関心という「情報危機の5つの悪」に対抗する社会的機能を強化する。

連れ去られたウクライナの子供たちの保護と帰還に関する物語は政治的な分断を超えてあらゆる層の共感を得られる唯一の強力なカウンター・ナラティブだという。

【関連記事】
ロシアが仕掛ける「影の戦争」──進化するハイブリッド脅威と日本の脆弱性
生き返ったワグネルの「影」、NATO内部に浸透か

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国、日本企業に軍民両用品の輸出禁止 三菱重や川重

ビジネス

アングル:日鉄の巨額CBが示す潮流、金利上昇と株高

ビジネス

日鉄、5500億円CBで過去最大調達 増額の可能性

ワールド

中国春節の鉄道旅客、前年比+11.5% 海外旅行は
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 5
    ペットとの「別れの時」をどう見極めるべきか...獣医…
  • 6
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中…
  • 7
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 8
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 9
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 10
    「高市トレード」に「トランプ関税」......相場が荒…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story