停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
Israeli threats to occupy or annex south Lebanon dust off a decades‑old playbook
ガザの次はレバノン?(4月8日、ベイルート中心部でイスラエルの攻撃を受けた建物) ベイルート中心部でイスラエルの攻撃を受けた建物 Elisa Gestri/Sipa USA via Reuters Connect
<ガザ、シリア、イランと戦線が広がる中、さらに南レバノン完全占領を主張する強硬論が国家の安定を揺るがす可能性がある>
イスラエルの強硬派の間では、ヒズボラに対する地上・空爆作戦をさらに強化し、南部により恒久的な支配体制を確立すべきだとの声が強まっている。
4月5日、イスラエルの国会議員18人は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いる政府に対し、レバノン南部をリタニ川まで占領・完全統治し、同地域のレバノン住民の移動・避難を求めるよう圧力をかけた。
これに先立ち、連立政権内で強い影響力を持つ極右ベザレル・スモトリッチ財務相は、南レバノンの全面併合を求めている。
イスラエルの軍事作戦は、4月7日にドナルド・トランプ米大統領が米国・イスラエルとイランは2週間の停戦に合意したと発表した後も、減速の兆しを見せていない。仲介者によれば、この停戦はレバノンにも適用される想定だった。
レバノンの一部を含む拡大イスラエルを主張するイスラエルの強硬派の主張は、宗教的な言説と結びつけて語られることが多い。この見解は、宗教的な極右に限らず、新しいものでもない。
中東研究では、リタニ川まで南レバノンを占領・併合する政策は、1948年のイスラエル建国以前から、世俗派・宗教派を問わず影響力あるシオニスト指導者の間で長く支持されてきた。
だが現在の軍事作戦の中でこの目標を追求すれば、レバノンの不安定化をさらに進め、地域全体の混乱を招き、イスラエル自身の安全保障を損なうリスクも指摘されている。
初期シオニズムと南レバノン
1918年、初期シオニスト指導者でありイスラエル建国の父とされるダビド・ベングリオンは、イスラエルの自然国境は現在のシリア、エジプト、ペルシャ湾の一部を含み、さらに北はレバノン南部のリタニ川まで拡張されるべきだと主張した。この川はレバノン南部の国境から約20マイル北に位置し、全長約108マイルで、同国の主要な水源となっている。
この立場は1919年にも再確認された。のちにイスラエルの初代大統領になるハイム・ワイツマンが率いるシオニスト機構の代表団は、第一次世界大戦後のパリ講和会議でパレスチナにおけるユダヤ人国家の設立を主張し、その領域はレバノン南部の都市サイダから始まり、リタニ川を含むべきだとした。
しかし最終的に、オスマン帝国支配下にあった大シリアおよびパレスチナの統治権は、国際連盟の委任統治制度のもとで英国とフランスに与えられた。
現在のレバノンの国境は1920年9月1日に遡る。フランス委任統治当局が、サイダやティールを含み、リタニ川以南で英国統治下のパレスチナ委任統治領と接する領域をレバノンとして認めたことに由来する。
1948年以降続く国境問題
1948年のイスラエル建国は、75万人以上のパレスチナ人の大規模な離散(ナクバ)と、同年のアラブ・イスラエル戦争を引き起こし、地域の国境をさらに変動させた。レバノンでは、イスラエルが南部の7つの村を占領・併合した。
1949年、国連の仲介のもと、イスラエルとレバノンは、フランスと英国が設定した1923年のパレスチナ・レバノン境界に基づく休戦ラインに合意した。
これは国家承認を意味するものではなかったが、土地の境界を事実上認めるものだった。この休戦合意は公式には破棄されていないが、1967年の第三次中東戦争後の国境変動によって実質的に機能しなくなった。
このときイスラエルは、レバノンが参戦していなかったにもかかわらず、1949年の休戦合意の承認を取りやめた。
1978年、レバノン領からパレスチナ武装勢力による攻撃が相次いだことを受け、イスラエルは「リタニ作戦」としてレバノンに侵攻し、南部を占領した。イスラエル軍が撤退したのは、20年以上後の2000年5月25日だった。
その後、国連は両国を分離するための撤退ラインである「ブルーライン」を設定し、緩衝地帯には国連平和維持部隊が配備された。
天然資源を巡る争い
だが国境問題は解決されないままだった。2010年、地中海最大の天然ガス田であるレヴィアタン鉱区が発見されたことで、海洋境界を巡る新たな争点も浮上した。
2022年10月、イスラエルとレバノンは米国の仲介で海洋境界協定に署名し、一部の分析では両国関係正常化の始まりと解釈された。
それでも、長年続く陸上の国境問題は依然として未解決のままだ。
イスラエル国内でリタニ川までの領土拡張を求める声は、多くの場合、宗教的言語や北部住民の安全保障を理由に正当化される。しかしリタニ川まで拡張すれば、水資源が限られ需要が増加するイスラエルにとって、新たな水源確保につながる可能性もある。
揺らぐレバノンの主権
未確定の国境とイスラエルによる断続的な南部侵攻により、レバノンは自国領土に対する主権を十分に確立できていない。
1985年、レバノン内戦と度重なるイスラエル侵攻の中で、イランの支援を受けるシーア派民兵組織ヒズボラが誕生し、状況はさらに複雑化した。
以降、ヒズボラはレバノン国内の軍事的主導権を握り、イスラエルと繰り返し衝突してきた。
2023年10月7日のハマスによるイスラエル奇襲後、ヒズボラとイスラエルの報復合戦は激化し、2024年9月には全面戦争に発展した。この戦争では、レバノン民間人3000人以上が死亡、1万4000人が負傷し、120万人以上が避難を余儀なくされた。
2024年11月27日、イスラエルとヒズボラは停戦に合意したが、この合意は双方の違反、特にイスラエル側による数百件の違反によって揺らいだ。
最終的にこの停戦は、米国とイスラエルによるイランとの戦争、ヒズボラの報復、そしてイスラエルのレバノン侵攻によって崩壊した。
戦争の激化とイスラエルによる占領の現実的脅威を受け、レバノン政府は自国領内でのヒズボラの軍事行動を禁止し、イラン大使を国外追放した。
しかしこうした措置も、南レバノンの全面占領を目指すイスラエル国内の勢力を満足させるには至っていない。
新たな占領がもたらすリスク
今回の作戦を含め、イスラエルは過去50年間で7回レバノンに侵攻している。
仮に再び長期占領を目指す場合、過去と同様にレバノンとイスラエル双方の安全は多くのリスクに直面することになる。
まず、南レバノンのシーア派コミュニティを標的とした攻撃や避難は、レバノン国内の宗派間の緊張を高める可能性が高い。
また、暴力の波がレバノン国外に波及する恐れもある。レバノン内部の不安定化はこれまでも国内にとどまらず、周辺国へと広がってきた経緯があり、イスラエル北部の住民や安全保障当局もその点を強く認識している。
第二に、ガザでの長期戦、シリアでの作戦、さらにイランとの戦争を抱える中、イスラエル軍は完全占領を実現する余力を欠いている可能性がある。エヤル・ザミール中将は安全保障内閣に対し、「イスラエル国防軍は崩壊寸前にある」と述べている。
さらに、レバノンでの戦争に対する国内の反対や、イスラエル社会に広がる戦争疲れも無視できない。
こうした要因だけで南レバノンにおける長期的な軍事駐留を阻止できるとは限らないが、ここ数週間でイスラエル当局の説明が、南部における緩衝地帯の設置から、リタニ川までの全面的な占領・統治へと変化している背景を理解する手がかりにはなる。
ヒズボラの行方は、イラン戦争の長期的な帰結と、それがレバノン南部での作戦に与える影響に大きく左右されるのは間違いない。
イスラエルは現在、国際的支持の低下、国内の緊張、地域全体での戦争の複雑化といった課題に直面している。過去の経緯を踏まえれば、南レバノンでの長期占領は新たな不安定化を招く可能性が高い。
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Mireille Rebeiz, Chair of Middle East Studies, Dickinson College
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
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