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南北アイルランド「統一」を問う国民投票に備えよ...「英国のEU離脱」の苦い経験から学ぶべきこと
治安面でも北にはなお多数の英国残留派(ロイヤリスト)準軍事組織が残存し、その人数はアイルランド軍の倍とされる。
統一後の暴力再発を抑え込むための軍事・警察能力は明らかに不足しており、統一を急げば治安空白に直面する恐れがある。マクブライド氏は「準備なき統一は危険だ」と指摘する。
北アイルランドには依然として統一を望まない人が多い。彼らは自らを英国人と考えている。ベルファスト合意は北アイルランドの人々には自らをアイルランド人、英国人、両方と認められる生得権があると明記しており、将来統一後も英国人として認められることが保証されている。
統一の理想を求めつつ現実の負担は避けたい心理
オトゥール氏によると、南の3分の2が統一を支持するが、増税や生活水準の低下には強く反対している。統一の理想を求めつつ現実の負担は避けたい心理について「主よ、私を貞淑にしてください。ただし今すぐではなく」と本音を漏らしたアウグスティヌスになぞらえる。
統一を阻む最大の誤解は、南の多くが「北が付け足されるだけ」と考えている点だとオトゥール氏はいう。統一を成功させるためには、国旗・国歌・英連邦との関係の再設計が必要となり、北側の英国的アイデンティティーを憲法上、認める姿勢が求められる。
人口動態も大きく変化している。北ではプロテスタントにもカトリックにも属さない層が増え、南でも同性婚や中絶合法化が国民投票で可決され、2割が外国生まれだ。こうした中間層は歴史的民族物語とは別の論理で統一を判断する可能性が高い。
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