コラム

南北アイルランド「統一」を問う国民投票に備えよ...「英国のEU離脱」の苦い経験から学ぶべきこと

2025年12月09日(火)18時37分

統一の鍵を握るのは中間層

オトゥール氏は「統一の鍵を握るのは旧来のプロテスタント、カトリック両陣営ではなく、新しい中間層だ」と解説する。2人に共通する危機感がある。それは英国側の政治状況が南北統一を問う国民投票を政治カードとして使う可能性だ。

英新党「リフォームUK(改革英国)」のナイジェル・ファラージ党首のような強硬なイングランド民族主義が台頭すれば、統一の是非とは無関係に国民投票が政治乱用されるシナリオは十分に考えられる。英国の欧州連合(EU)離脱以上の混乱を引き起こすとの懸念が膨らむ。

2人は「2030年までに国民投票を」というシン・フェイン党の主張を退け「性急な統一は危険」と警鐘を鳴らす。アイルランド統一は国家の全面的再設計であり、感情の問題ではない。制度・財政・治安の現実問題だ。必要なのは理念ではなく、透明な制度設計と長期的な準備である。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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