コラム

トランプ前大統領が内々に語る「ウクライナ終戦」の秘密計画...日本にも危機が及ぶ「戦争の終わらせ方」

2024年04月09日(火)17時31分
米トランプ前大統領と露プーチン大統領

大統領時代にプーチン露大統領と会談したトランプ(2018年7月) Kevin Lamarque-Ruters

<「私が大統領なら24時間以内にウクライナ戦争を片付けられる」と豪語するドナルド・トランプ前米大統領だが>

[ロンドン発]米紙ワシントン・ポスト(4月7日付)は「ウクライナ戦争を終結させるためのドナルド・トランプ前米大統領の秘密計画」という見出しで「トランプ氏はウクライナに圧力をかけて被占領地を放棄させることで戦争を終結できると内々に語っている」と報じた。

それによると、トランプ氏の考えはウクライナにクリミア半島と東部ドンバス地方(ドネツク、ルハンスク両州)をロシアに割譲するよう働きかけることだという。トランプ氏はこれまで「私が大統領なら24時間以内にウクライナ戦争を片付けられる」と豪語してきた。

トランプ陣営の外交・安全保障専門家はロシアより中国重視だ。トランプ氏はロシアとウクライナ双方が「面目を保ちたい」「逃げ道を求めている」と考えており、ウクライナの一部の人々は現在の被占領地がロシアの一部になっても構わないだろうと漏らしているという。

一方、ジョー・バイデン米大統領はロシアの全面侵攻が始まってから2年間で463億ドルの軍事支援を含む総額743億ドルのウクライナ支援を行ってきた。共和党が過半数を占める米下院はまだ600億ドルのウクライナ追加支援を可決していない。

停戦はプーチンに軍備増強の時間を与えるだけ

ロシアが巻き返し始めたウクライナ戦争にこれ以上巻き込まれると、脱炭素化や半導体支援の産業政策で膨張した米国の財政は持たなくなる。4月8日現在4.4%超の米国の長期金利は5%を上回り、インフレ再燃の懸念が膨らむのは必至だ。金が暴騰するのは不安のあらわれだ。

しかし領土割譲と停戦は国防産業の動員体制に入るウラジーミル・プーチン露大統領に軍備増強の時間を与えるだけだ。デービッド・キャメロン英外相(元英首相)とステファーヌ・セジュルネ仏外相は英紙デーリー・メール(4月7日付)に英仏協商120年に合わせ連名で寄稿した。

「ウクライナはこの戦争に勝たなければならない。ウクライナが負ければ西側全員が負ける。今ウクライナを支援できなかった場合の代償はプーチンを撃退するために支払う代価よりはるかに大きい。ロシアを確実に打ち負かすために西側はさらに多くのことをしなければならない」

9年近く事務総長を務め、9月末に退任する北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ氏は加盟32カ国にウクライナのために5年間で1000億ユーロの基金設立や、米国が主導するウクライナ支援グループ(50カ国以上)の主導権をNATOが握ることを提案している。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで軟調、円は参院選が重し
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story