<危機を乗り切るための「処方箋」もないことはないが>
[ロンドン発]英国経済は相次ぐマクロ経済ショックと財政難により2030年までに国際通貨基金(IMF)の緊急支援を仰ぐことになるかもしれないと米ハーバード大学教授で元IMFチーフエコノミストのケネス・ロゴフ氏が警鐘を鳴らしている。
保守系英紙デーリー・テレグラフ(6月6日付)のインタビューに応じたロゴフ氏は英国がIMFの救済パッケージを必要とする財政危機に陥る確率を「50%超」とみる。コロナ危機、ウクライナ戦争、イラン戦争・ホルムズ海峡封鎖と度重なるショックが英国の財政基盤を脆弱にする。
レイチェル・リーブス英財務相は最初の予算案で700億ポンドの公共支出を盛り込んだが、企業や富裕層を狙い撃ちにした増税で確保した財源は半分に過ぎず、残りは借入で賄った。英国の政府債務残高は今年9月までに3兆ポンドに達し、対国内総生産(GDP)比で100%に迫る。
1980年代初頭にミッテラン仏大統領が導入した左派政策
6月18日のメイカーフィールド選挙区補選に出馬、キア・スターマー英首相の追い落としを図るマンチェスター市長アンディ・バーナム氏の政策について、ロゴフ氏は1980年代初頭にフランソワ・ミッテラン仏大統領が導入した急進的な左派政策になぞらえる。
「ミッテラン氏が政権に就くと市場は崩壊した」(ロゴフ氏)。国有化・社会保障費の拡大などの社会主義的政策は仏通貨フラン(当時)の暴落、猛烈なインフレ、資本流出を引き起こし、ミッテラン氏は2年後に厳しい緊縮財政を強いられる。いわゆるミッテラン・ショックだ。
世界最大の経済大国・米国に比べて英国の財政赤字と債務水準は低いにもかかわらず、英国経済は米国より脆弱な状態にあるとロゴフ氏は強調する。「英国は成長の兆しが見られないため、米国よりも深刻な状況にあるのは間違いない」(ロゴフ氏)