コラム

【韓国大統領選】李在明と尹錫悦の経済政策、不動産政策、労働政策を比較する

2022年02月21日(月)10時50分

尹候補は基本的に文政権の労働政策を大幅修正する考えだ。民間を中心に雇用を創出し、国際協力を強化し若者の海外への就業を支援する。そして、無理な労働時間の短縮よりは柔軟な働き方を推進し、最低賃金に関しては現場の声や中小企業の財政状況を反映して合理的に改善していく方針である。

労使関係においては両候補共に労使協力を強調しており、「公共機関労働取締役制」と、公務員及び教員労働組合に対する「タイムオフ制」の導入に対しては賛成する立場を見せている。

「公共機関労働取締役制」とは、公的企業の労働者代表が取締役会に参加し、発言権と議決権を持って意思決定に参加する制度だ。一方、「タイムオフ制」とは、企業が賃金を支払う労働組合専従者(会社の業務を行わず労組の業務だけを行う組合員)の範囲を定め、そのほかは原則として賃金を支払うことができないようにする制度だ。

韓国労総は李候補の支持を宣言し、李候補は2月10日に韓国労総と労働政策の協約式を行った。しかしながら、韓国労総傘下の一部の労働組合では韓国労総の李候補支持に反対し、尹候補を支持すると宣言しており、労働組合の間でも意見が分かれている。

李在明、尹錫悦候補の主な労働政策比較
kim20220220191307.jpg

政権維持か交代か

韓国では2月13日から14日までに第20代大統領選の候補者登録が行われ、李在明、尹錫悦、安哲秀、沈相ジョン候補を含めて計14人が候補者として登録した。しかし、上述した4人以外の10人の候補の得票率は全部で1%にも満たないだろう。

つまり、李在明、尹錫悦、安哲秀、沈相ジョン候補の今後の動きが選挙に大きな影響を与えるだろう。特に今後の関心事は李候補が勝利し、進歩・革新系政権続くのか、あるいは保守系の尹候補が勝利し政権交代に成功するのかにある。今後5年間の韓国のリーダに当選されるのは誰なのか、今後の動向に注目したい。

※韓国の第20第大統領選挙の主なスケジュール

・2022年2月3日:韓国与野党4人の大統領候補が参加する1回目のテレビ討論会

・2022年2月11日:韓国与野党4人の大統領候補が参加する2回目のテレビ討論会

・2022年2月13~14日:候補者の立候補届け出(14人が候補者登録)

・2022年2月15日:選挙運動スタート

・2022年3月4~5日:事前投票

・2022年3月9日:第20第大統領選挙の投票日

・2022年3月10日:選挙結果発表

・2022年5月10日:新大統領就任

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ガザ全域で攻撃継続 46人死亡 病院

ビジネス

アマゾン、第3四半期利益・売上高が予想超え ネット

ワールド

原油先物は続伸、イランがイスラエル攻撃準備との報道

ビジネス

インテル、第4四半期売上高見通しが予想上回る 株価
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米大統領選と日本経済
特集:米大統領選と日本経済
2024年11月 5日/2024年11月12日号(10/29発売)

トランプ vs ハリスの結果次第で日本の金利・為替・景気はここまで変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後はさらなる「倒産増加」が予想される
  • 2
    「まるで睾丸」ケイト・ベッキンセールのコルセットドレスにネット震撼...「破裂しそう」と話題に
  • 3
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符を打つ「本当の色」とは
  • 4
    脱北者約200人がウクライナ義勇軍に参加を希望 全員…
  • 5
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 6
    北朝鮮軍とロシア軍「悪夢のコラボ」の本当の目的は…
  • 7
    天文学者が肉眼で見たオーロラは失望の連続、カメラ…
  • 8
    中国が仕掛ける「沖縄と台湾をめぐる認知戦」流布さ…
  • 9
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 10
    自爆型ドローン「スイッチブレード」がロシアの防空…
  • 1
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 2
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 3
    キャンピングカーに住んで半年「月40万円の節約に」全長10メートルの生活の魅力を語る
  • 4
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符…
  • 5
    2027年で製造「禁止」に...蛍光灯がなくなったら一体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語ではないものはどれ?…
  • 7
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 8
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後…
  • 9
    「決して真似しないで」...マッターホルン山頂「細す…
  • 10
    【衝撃映像】イスラエル軍のミサイルが着弾する瞬間…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 8
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 9
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 10
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story