コラム

日本が韓国の新型コロナウイルス対策から学べること ──(3)情報公開

2020年04月21日(火)13時40分

また、1月20日に韓国で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されてから、疾病管理本部の本部長や副本部長は、国内の感染者状況などについて毎日ブリーフィングを行っており、国民はYouTubeを通してブリーフィングの内容を確認することができる。ブリーフィングを行う疾病管理本部のチョン・ウンギョン本部長や、クォン・ジュヌク副本部長(国立保健研究院長)は交代(メインは本部長)で新型コロナウイルスの現状について丁寧に説明をしており、国民の安心感を高めるのに重要な役割を果たした。チョン・ウンギョン本部長や、クォン・ジュヌク副本部長は、それぞれ予防医学や保健医学の博士号を持っている医療や感染症に関する専門家でもある。

スマホから感染経路を把握

韓国政府は、感染拡大を防止するために感染者の感染経路や自己隔離中の移動経路に関する情報を国民に提供した。韓国政府は、感染が確認された場合、感染者のスマートフォンやクレジットカードの使用履歴、監視カメラなどの情報などを用いて感染されるまでの感染経路を把握し、公開している。また、自治体の疫学調査チームは感染が確認された人と接触した可能性がある人の移動経路を調べて個人別に連絡をし、発熱などの症状がある場合にはPCR検査を、無症状の場合には自己隔離対象者として指定し、自宅等で2週間自己隔離をさせている。

先日、韓国の疾病管理本部に電話をして確認した所、最近はスマートフォンが普及し、さらに韓国では現金よりクレジットカードの使用が一般的なので個人の位置情報を把握することはそれほど難しくないそうだ。経済産業省が2018年に公開した報告書によると、韓国のキャッシュレス決済比率は89.1%で他の国の数値を大きく上回っている。

各国のキャッシュレス決済比率の状況(2015年)
kim200421_1.png

出所)経済産業省(2018)「キャッシュレス・ビジョン」

さらに、4月1日からは全ての入国者に2週間の自己隔離を義務化している。入国者は入国審査場の手前に掲示されたQRコードをスマートフォンで読み込み、「自己隔離者安全保護」アプリをインストールしなければならない。症状がある人は空港に設置されている検査場所でPCR検査を受け、無症状の人は自宅に帰宅(韓国に隔離のための居住地などがない場合は韓国政府が準備した施設を隔離場所として利用、有料)してから新型コロナウイルスの検査(入国後24時間以内)を受けるように伝えている。入国してから14日間の自己隔離中は毎日体温などを自ら図り、専用アプリに報告する義務がある。自己隔離対象者が隔離場所から離脱した場合、スマートフォンにインストールされているアプリの位置情報システム(GPS)から警報音が鳴らされる。また、自己隔離対象者が自己隔離を違反した場合には1年以下の懲役または1,000万ウォン以下の罰金が科せられる。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英賃金上昇率、22年5月以来の低水準 雇用市場に安

ワールド

インドネシア大統領、トランプ氏に「エリックに会える

ビジネス

イオン、3―8月期純利益は9.1%増 通期見通し据

ビジネス

アサヒGHD、決算発表を延期 サイバー攻撃によるシ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 9
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 10
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story