コラム

イギリスも悩む人口の都心部一極集中

2018年09月21日(金)16時20分

需要増加で住宅価格が泣くほど高い

もしもイギリスの地図を人口に従って変形させてみれば、南東部は中年のビール腹みたいに膨れ上がり、スコットランドやウェールズの広い一帯はほとんど消えそうなほどに小さくなるだろう。

オランダや日本のような国も人口密度が高いとされ、どちらもイギリス以上だ。ただし、イングランドだけを切り離してみれば、オランダや日本よりも人口密度が高い。そして、現在も増加を続けている。

僕は今でも、イギリスに帰国して暮らし始めたのはつい最近だったように感じている(実際は8年前だ)。この8年の間に、イングランドの人口は300万人近く増えた。別の言い方をすれば、神戸市と京都市の合計に相当する人口がこの期間に増えた、ということになる。

これによって、水供給への懸念が高まっただけではない。南東部で住宅価格が泣くほど高いのにはいろいろな理由があるが、(供給がとても追いつかないほどの)需要の急増が1つの要因であることは確かだ。インフラにかかる負担は問題と化しており、学校も病院も、収容能力拡大が追い付いていない。電車や道路の混雑は悪化する一方だ(東京ほどひどくはないけれど)。

僕がイングランドで何より気に入っていることの1つは、いわゆるグリーンベルトだ。電車に乗ってロンドンを出ると、まもなく緑の野原が広がりだす。せわしないロンドン中心部から30分も走れば、開けた田園地方に行けるのだ。これは、どこまで行っても東京が終わらないような日本とは、かなり事情が違う。日本では、市街地が果てしなく続くように見える。それに比べて、ロンドン周辺エリア(そしてほかの大都市圏周辺エリア)の開発を規制したのは、先見の明のある動きだった。

現在、増加する人口に対応する住宅を提供するため、このグリーンベルトを見直すべきではないかと主張している専門家もいる(規制を撤廃してグリーンベルトに住宅を建設する必要がある、と)。あるいは、もっと高密度の住宅(庭と駐車場付き一戸建て住宅ではなく、高層マンションなど)を作って新たな方法を探るべきだと言う人もいる。

でもイングランドの多くの人は、単純に、もうこれ以上人口を増やすべきではないと思っている。

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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