コラム

株価が上がっているのに、「価値の下がっているモノ」を貯め込んでいる日本人

2021年02月26日(金)12時05分

「お金のまなびば!」より

<なぜコロナ不況なのに日経平均は急騰しているのか。そこには日本人の「ゆたかさ」にまつわる問題が絡んでいると、ひふみ投信シリーズのファンドマネージャー・藤野英人氏は指摘する>

「お金のまなびば!」は、レオス・キャピタルワークスの代表取締役会長兼社長で、ひふみ投信シリーズのファンドマネージャーとして知られる藤野英人氏と、お金や投資、経済について学んでいく YouTubeチャンネル

この連載では「お金のまなびば!」から厳選した動画を元に、投資や経済に関して「日本人が知っておくべきこと」をお届けしていく。

今回取り上げる動画のテーマは、「なぜ株価は上昇しているのか」

2021年2月、日経平均株価は3万円の大台を30年ぶりに突破した。景気悪化や緊急事態宣言の延長など暗い話題が多いなか、株式市場だけが活性化しているのはなぜなのだろうか。

もちろん、株価の上昇には複合的な要素が絡み合っているが、藤野氏が考える要因のひとつは「通貨価値の下落」だ。

新型コロナウイルス禍による経済政策で、政府と中央銀行が盛んに資金供給を行った結果、通貨供給量は過去最高水準となった。しかし、モノ(お金)は量が増えすぎると、その価値は低下する。「お金の価値が下がっている」と、藤野氏は言う。

株の発行量と通貨の発行量を比べると、通貨のほうが劇的に多い。そのため、相対的に株の価値が上がっているように見えるというわけだ。

「多くの人は日経平均の上昇に対して、『これはバブルだ、株を売ろう』と考える。しかし、売ったことにより、お金という"価値が下がっているもの"を持ってしまったことになる」

藤野氏によれば、バイオリンや高級腕時計もいま爆騰しているが、それも同じ理由。通貨と違って数が限られており、富裕層が投資として買っているからだ。

通貨の価値が下がっているのに、バブルを警戒して株を売り、お金を手にしてしまう日本人――。このことは、日本人の「ゆたかさ」に密接に関わる問題だという。

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「お金のまなびば!」より

株高の恩恵を受けているのは外国人投資家だけ!?

短期的な日経平均の値動きには、海外投資家の動向が大きな影響を与えると言われている。なぜなら、海外投資家は国内投資家に比べて売買を頻繁に繰り返す傾向があり、日本株の売買シェアの実に6~7割を占めているからだ(東京証券取引所「投資部門別売買状況」)。

2020年後半、日本株を買い続けてきたのは海外投資家と日本銀行だ。一方、この状況を「バブル」と捉えた個人は、ほぼ一貫して保有株を売り続けている。

プロフィール

藤野英人

レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)
1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)、『「日経平均10万円」時代が来る!』(日経BP 日本経済新聞出版)など。

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