コラム

シンギュラリティ「任期中に来る可能性高い」 安野貴博に聞いた、AI時代を生き抜くうえで一番大事な力とは?

2025年08月29日(金)20時40分

安野 AIを作ってる会社の方々、たとえばOpenAIのサム・アルトマンさんや、Google DeepMindのデミス・ハサビスさんの発言でも、2030年くらいまでには大体できるのではないかと言っているんですよね。

 たかだかあと5年ですよ!

安野 なので私の参議院議員の任期中に来る可能性が高いと思っています。ある種、知的な労働についてはAIの方が全然できるよねという時代が、任期中に来てもおかしくないと思っています。

そうなった時にどういうふうに迎えるべきかというのは、チームみらいとしてもすごく大きなテーマだと思っています。どれくらいの確率で起こるのかは私も100%とは思わないですけれど、10%だとしても「そうなったらこうしよう」というのを考えておくのは大事だと思っています。

でも、それを考えている政治家ってそんなにいらっしゃらないわけです。そこに私は危機感を持っています。我々の提案の1つ目は、AIが使いこなされた社会ではたぶん、すごく儲かる企業と全然儲からない人たちの格差が今よりも広がると思います。今はビッグテックの収益性がものすごく高いじゃないですか。今のビッグテックと普通の中小企業の差よりも格差ができると思うんです。

そうなった時に、トップ10社からいかに課税できるかが非常に大きなポイントです。今のビッグテックには課税回避スキームがあるので、ここは国際協調しながらちゃんとビッグテックのAIプラットフォーマーに対して課税ができるかどうかが大きなポイントだと思っています。

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OpenAIのサム・アルトマンCEO Mijansk786-Shutterstock

2つ目は、そこで課税したものをいかに早く必要な人たちに対して再分配できるのかだと思っています。今は現金給付ですら数カ月かかったり、そのための事務コストが相当かかったりします。必要な人をすぐに見極めてすぐに再分配ができるという仕組みを作っておかないと、AI時代は「来月に何か新しいモデルが出て、この職業は雇用ダメージをいきなりくらいます」ということが起きる可能性が不確実性でどんどん高まっていきます。そうなった時にスムーズに課税して再分配できるっていう構造になっているかいないかで、社会の安定性は非常に変わるわけです。

デジタル時代、個人に必要なことは?

 個人としての備えはどうしたらよいですか? 個人としてはまだピンと来てない人が多いというか、「人よりもAIが賢くなってしまったら、自分の仕事を取られちゃうかもね」ぐらいのふわっとした感じでしか捉えてない方が多いと思います。

今のうちにAIをこうやって使いこなせるようになっておくべきだとか、何かアドバイスはありますか?

安野 過渡期においては、ピンチもありますけれどチャンスもたくさんあると思います。一番重要なのは、宣伝になりますけれどやはり「はじめる力」だと思っています。

AIが賢くなればなるほど、人が「これをやりたい」とさえ言えば、「それならばこれをこの順番にやっていくとよいのではないですか」とサポートしてくれるようになるわけです。

そうなった時に、一番重要なのは「どこをやりたいか」「何をやりたいか」「どこに自分たちは向かうべきなのか」を見極める力、そしてそれを実行に移す力だと思います。そうすれば、色々と変化が激しい時代においても、その中で出てくるチャンスを掴めるようになるのではないでしょうか。

 私もこの『はじめる力』を読んで、とても印象的だったのは「ルートが大事ではなくて、コンパスと軌道修正が大事」と言っている部分です。今の時代は「この1つの道しか進めない」と思い込んでしまうと、まかり通らなくなってきてしまったのかなと感じました。

安野 まさにそうです。不確実性がすごく高いので、最初にがっちりと「この道をこう曲がってこう行くのだ」と決めていたとしても、進んでいる間に地形がバッコンバッコン変わるわけです。

だとしたら、やはりそのコンパスでちょっとずつ軌道修正していくという近づき方のほうがいいと思います。

現時点での人生のゴール

 安野さんはマニフェストもそうですし、今回の選挙期間中も柔軟にビジョンなども変えてらっしゃいましたが、現時点(25年8月6日)での人生のゴールはどこに設定しているのですか。

安野 人生のゴールは難しいですね。私は、ゴールとして点を想定するよりも、プロセスとしてこういう状態であり続けるというほうが重要だと思っています。

たとえばゴールの設定を、分かりやすい例として「ラーメン屋を開く」とすれば、開いた後はどうするんだという問題がありますよね。その都度ゴールを探していくのもよいのですが、それよりは自分が解きたいと思う問題を解くことに集中できる状態を作るとか、何か自分がちゃんとそれを楽しめている状態を維持するとか、状態ベースでそこに向かっていったほうがよいのではないか。そんなふうに考えているかもしれません。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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