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放っておいたら維持できない? 「究極の共通言語」計量単位維持・設定の最前線について、臼田孝氏に聞いた

産業技術総合研究所計量標準総合センターの臼田孝・総合センター長 筆者撮影
<長さや重さの計量単位を国際的に統一するために「メートル条約」が締結されて今年で150年。計量の本質や重要性、「秒」の再定義と「月の標準時」設定についてまで、5月20日の「世界計量記念日」にパリで開催された記念式典にも出席した産総研計量標準総合センターの臼田孝・総合センター長に聞いた>
国内のどこであろうと「2キログラム」と表示された米袋を買えば、間違いなく2キログラムの米が入手できると信じられることは、日本が特別な国だからかもしれません。
科学ジャーナリスト茜灯里が、気になるトピックスについて関係者に深掘りするインタビュー企画「茜灯里の『底まで知りたい』」。第2回ゲストは、産業技術総合研究所(産総研)計量標準総合センター・総合センター長で、「計量の番人」である国際度量衡委員会の幹事も務める臼田孝氏です。
世界中のどこでも、どの時代でも、たとえ宇宙人が地球を訪れても同じサイズや量をイメージできる。そんな究極の共通言語である「計量の基本単位」と、「測ることの本質や重要性」を丁寧に分かりやすく語ってくれる臼田総合センター長は、物腰の柔らかなジェントルマンです。講演や一般向けのレクチャーでは、丁寧で分かりやすい説明が評判です。一方、学生時代を振り返って、機械文明に疑問を持った自分のことを「中二病だった」と評するなど、お茶目な面もあります。
このインタビューをより楽しんだり、計量に関する知識を深めたりするために「7つのキーワードで学ぶ『メートル条約締結150周年と基本単位』」の記事もぜひご覧ください。
【今回のテーマ】「測ること」とメートル条約
計量単位は、古くは「王の肘から中指までの長さ」などと決められ、時代や地域でバラバラだったが、国際交流や商取引が活発になると共通認識できる統一の単位系が必須になった。メートル条約は長さや重さの基準を国際的に統一するための条約で、今から150年前の1875年5月20日に17カ国が締結した。日本は10年後の1885年に加盟した。
現在は、メートル条約の適切な執行の監視や、計量単位に関する課題を検討するための国際度量衡委員会が国際度量衡局内に置かれている。
茜 臼田先生は、5月20日の「世界計量記念日」にパリで開催されたメートル条約締結150周年記念式典と基本単位(※)の今後の課題に関する講演会に、国際度量衡委員会幹事として出席されました。記念式典は現地では大きく報道されたのですか?
※メートル条約は、当初は長さ(メートル)と質量(キログラム)のみを定めていたが、現在は、時間(秒)、電流(アンペア)、温度(ケルビン)、光度(カンデラ)、物質量(モル)を加えた7つの基本単位を定めている。
臼田 ご存知の通り、メートル法はフランスで作られたものですし、今回の式典の会場はパリのユネスコ本部だったこともあって、注目は高かったように感じました。フィガロやフランス2などの大手マスコミも取材に来ていましたよ。