コラム

7つのキーワードで学ぶ「プラネタリーディフェンス」 天体衝突から地球を守る活動、その「これまでの成果」とは?

2025年05月02日(金)19時10分
プラネタリーディフェンス

(写真はイメージです) joshimerbin-Shutterstock

<JAXAが「地球防衛」と呼ぶこの活動は「れっきとした現実のミッション」であり、最もホットな最新科学トピックだ。その概要、成果、そして最新の計画を紹介する>

「プラネタリーディフェンス(Planetary defense)」と聞くと、宇宙人の襲撃から地球を守るようなSF映画の話だと思うかもしれません。けれど、地球近傍天体(Near Earth Object;NEO)を逐次観測して地球衝突確率を計算したり、地上に落下した場合の被害の最小化を考えたりするれっきとした現実のミッションです。近年は各国の宇宙機関を中心に、国際会議やワークショップで活発な議論が展開されています。

本年4月には東京大学で一般向けの講演会「天体衝突から地球を守る──地球防衛の最前線」 (主催:東京大学宇宙惑星科学機構、共催:JAXA<宇宙航空研究開発機構>)が開かれ、JAXAプラネタリーディフェンスチームやNASA(アメリカ航空宇宙局)、ESA(欧州宇宙機関)のプラネタリーディフェンス関係者から現状や問題点が説明されました。その後、1週間にわたって研究者向けの国際ワークショップも開催されました。

日本で今、最もホットな最新科学の話題に乗り遅れないように、7つのキーワードから「プラネタリーディフェンス」を概観しましょう。

インタビューコラム「茜灯里の『底まで知りたい』」の宇宙科学研究所・藤本正樹所長の回の予習復習にもおすすめです。


◇ ◇ ◇

1.プラネタリーディフェンス(Planetary defense)とは

天体衝突から地球を守るための活動のこと。JAXAは分かりやすいように「地球防衛」という日本語訳を当てている。

地球に衝突する恐れのある地球近傍天体(NEO)を発見し、追跡観測を行って軌道を正確に求めて衝突確率を算出したり、衝突回避活動や被害最小化を検討したりする。科学領域だけでなく国際協力や法整備の検討も必要なため、活動は多岐にわたる。

かつてはスペースガード(Space Guard)と呼ばれていた。現在はプラネタリーディフェンスもスペースガードもほぼ同義に使われている。

1994年、木星に天体が衝突したことから地球でも起こりうると危機感が高まり、96年にスペースガード財団(The Spaceguard Foundation)が設立された。その後21世紀になって地球近傍天体の発見個数が急速に増大し、国連でも議論されるようになって、プラネタリーディフェンスと呼ばれるようになった。

日本では、美星スペースガードセンターがスペースデブリ(宇宙ゴミ)とともに小惑星も観測。2024年4月にはJAXAにプラネタリーディフェンスチームが発足している。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ブチャ虐殺から4年、EU外相ら現地訪問 支援再確認

ワールド

中国、EU議員団の8年ぶり訪中を歓迎 関係安定化に

ワールド

イスラエル、レバノン南部に緩衝地帯設置へ 国防相表

ワールド

ゴールドマン、26年末の金価格予想を5400ドルに
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 5
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 8
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story