ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
“Recharging” Aging Tissues
古い電気製品に新しい電池を入れるようなものと研究者は言う MILLAF/SHUTTERSTOCK
<本誌記者ハンナ・ミリントンが伝える今回の研究は、老化した細胞が再び活力を取り戻す未来を垣間見せるものだ。テキサスA&M大学の科学者たちは、細胞内のミトコンドリアを入れ替える革新的な手法により、老化関連疾患の治療に新しい道筋を示し始めている>
▼目次
発症後でも効果あり? 月1回の投与で済む?
体の老化を(一部であれ)食い止めて元気を取り戻せるようになる日に、人類は一歩近づいたのかもしれない。そうなれば、医療は大きく変わる可能性がある。
テキサスA&M大学の研究チームが開発を進めているのは、細胞のエネルギー生産の減少を食い止め、場合によっては増加に転じさせる技術だ。エネルギー生産が元の水準に戻ると、細胞の健康状態も劇的に改善されるという。
具体的には細胞内でエネルギー生産を担う小器官ミトコンドリアを入れ替えて、年老いて傷ついた細胞を若返らせる。「体内の生物学的なシステムを使って、老化しつつある細胞の力を取り戻すことに向けた第一歩だ」と、研究チームの1人、同大学のアキレシュ・ガハルワール教授(生医学工学)は声明で述べた。
ミトコンドリアの機能低下は、老化や心臓病、それにアルツハイマー病などの神経変性疾患と関連している。つまり古いミトコンドリアを新しく元気なものに刷新するという、体にもともと備わった能力を高めることができれば、こうした病気と闘ったり、老化を食い止めることができるかもしれないのだ。

「エネルギー生産を回復させ、酸化ストレスを減らすことにより、ミトコンドリアの減少の影響を受けた特定の細胞を若返らせる効果が期待される」とガハルワールは言う。「全体的なアンチエイジング療法ではないが、ミトコンドリアの機能不全が主因の老化症状を修復するのに役立つかもしれない」
そのために研究チームが利用したのが「ナノフラワー」と呼ばれる花の形をしたごく小さな物質(成分は二硫化モリブデン)と幹細胞を組み合わせるという手法だ。これにより、幹細胞は通常の2〜4倍ものミトコンドリアを産生するようになったという。研究チームの1人、ジョン・スーカーは声明で「期待を上回る効果だ」と述べた。






