コラム

シンギュラリティ「任期中に来る可能性高い」 安野貴博に聞いた、AI時代を生き抜くうえで一番大事な力とは?

2025年08月29日(金)20時40分

 最終的に最善なことができるように、その時その時に最善を尽くせるような、場作りとか、スキル磨きとかをしていきたいというような感じですか。

安野 そうですね。私は「何かに備えてこのスキルを磨いておこう」というようなことをあまりしたことがないんです。「これをやらなくちゃいけない」という時に、もちろん素人なりになのですが、そのスキルを急速に頑張ります。

たとえば今回も、応援演説とか、街頭演説とか、そんなことはやったことがないわけじゃないですか。これは過去に準備しておくことも不可能なわけです。大学生ぐらいの時に「将来、政治家になるかもしれないから街頭演説の練習しておこう」とはならないですよね。

今後は「予期しないことがスキルとして求められる場面」が社会全体として増えると思います。そうなった時は「何かが来た時に備えて準備する」というよりは、「必要になった瞬間にそれを急速にキャッチアップする」というメタスキルのほうが大事だと思います。

 安野さんには、スティーブ・ジョブズの「コネクティング・ザ・ドッツ*」のようなものはありますか。

つまり、コンサルティングファームにもかつていらっしゃって、自分で起業もされてるから、お金集めるのに演説ではないですけれど説得するような話し方を学んだり、説得できる資料を作ったりしたと思います。それが今思えば、現在ここにいる安野のための布石だったみたいな感覚はありますか?

*コネクティング・ザ・ドッツ:アップル創始者スティーブ・ジョブズが2005年にスタンフォード大学卒業式で語った言葉。「ある経験が思いもよらないところで思いもよらない形で活きてくる」といった意味

安野 それはかなりあります。今回の選挙では、私のキャリアを通して当時関わってきた人たちの協力をたくさんいただきました。

コンサルティングファームは政策もよく作っているので、そういった政策作りの経験ある方にも手伝っていただきましたし、スタートアップでソフトウェア開発をしている人達にも手伝っていただきました。

そういった人のつながりや自分の経験を含めて、予期していなかった方向に突然役立った部分は大いにあります。なので、そういう意味ではコネクティング・ザ・ドッツではありますが、その一方でアンラーン(unlearn)しないといけないことも、ものすごくたくさんあるわけです。

つまり、ビジネスの意思決定の仕方と政治の意思決定の仕方って、全然違うじゃないですか。ビジネスでBtoCの消費者向けの宣伝の仕方と、選挙で全員が有権者という時の説得の仕方も全然違います。なので、アンラーンもしないといけないし、意外と役立つものもあるっていうことで、見極めがすごく難しいです。

妻・里奈さんの存在

 この話は少々照れくさいかもしれませんが、チームみらいの中ではやはり(妻の)里奈さんの存在って大きいのではないでしょうか。しかも、めちゃめちゃ演説が上手いんですよね。

安野 めちゃめちゃ上手いですね。

akane_anno_kuroiwa.jpg

渋谷駅前で演説する安野さんの妻・黒岩里奈さん(7月3日) 筆者撮影

 それに、私が見ていて今回の選挙戦で印象深かったのが、第1声で演説をする安野さんに対して壇の下から里奈さんが「安野君、ちゃんと第1声って言って! 第1声って言うとね、メディアが取り上げてくれるから」って一生懸命声をかけていて、それを聞いた安藤さんがかしこまって「第1声です」と言っていたのがすごく面白くて。

「里奈さんを政治家にすると良いのでは?」という声は結構色々なところからあると思うのですが、夫婦そろって政治家になるということは考えていらっしゃらないですか?

安野 これは僕の意向というよりは本人の希望だなと思っているので、色々と黒岩(里奈さん)に聞いてみたいと思っています。

 「どうするの?」と聞くような具体的な話はまだですか。

安野 「どうするの」という段階ではないです。ただ、明らかに街頭演説は上手いので、そこの適性は間違いないと思っています。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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