コラム

シンギュラリティ「任期中に来る可能性高い」 安野貴博に聞いた、AI時代を生き抜くうえで一番大事な力とは?

2025年08月29日(金)20時40分

なぜソフトウェアエンジニアに?

 政治家になる前は、もともとAIの技術者でいらっしゃって。IT技術者と言ったほうがよろしいですか?

安野 ソフトウェアエンジニア、まあIT技術者ですね。よく研究者と間違えられるのですが、研究者と技術者は全然違うじゃないですか。私は技術者のほうで、理論というよりは実践に興味があります。

 社会にどう役立てるかとか、どういうふうに組み入れていくか、というようなところに興味があるんですね。そもそも何故その部分に興味を持たれたのですか?

安野 たぶん社会に対して興味があるのだと思います。理論は理論で面白いなと思うことはたくさんあるのですが、理論だけにとどまらずそれが社会をどう変えるかのほうにより興味があります。

なので、研究者にならずにスタートアップのほうに行ったとか、理学部ではなく工学部に行ったとか、それらはたぶん全部、実装して世の中が変わることに興味があるからだと思います。

 そうなんですね。私は松尾研(※安野さんの出身研究室)で、強化学習をやっていらっしゃる研究者にインタビューをしたことがあります。社会とのつながりにはその方も興味を持っていましたが、安野さんはより実践的で、社会というか「人が成し得ること✕ AIのコラボ」により興味があるのかなと思いました。それで社会をどう変えるかというか、ご自身が変えてやりたい、みたいなものを感じます。

安野 そこに興味があるタイプだと思います。松尾研には両方いらっしゃるんですよ。理論に興味がある方も、実際に起業するビジネスを作りたい方もいらっしゃいます。そこがすごく面白い研究室だと思います。

安野さんにとってAIはどんな存在?

 安野さんにとって、AIとは何ですか? 世間一般では「手が届かないもの」と思う方もいるし、「人間はAIを使役しなくてはならない」と考える方もいらっしゃいます。今はどのあたりの立場を取られていますか?

安野 面白いですね。今のところ、ざっくり言うと三つの立場があると思っています。「AIは神である」「AIは道具である」「AIは友達である」です。私は結構「AIは友達である」という方向性に共感しています。もちろん、それぞれのユースケースや場面場面で変わってくるとは思いますが、ある種「一緒に共生していく知能としてのAIって何なんだろうな」という方向で考えることが多いと思います。

 海外の人に言われたのですが、「日本人は鉄腕アトムやドラえもんに親しんでいるからAIを友達とか仲間とかと思いがちで、人工知能は人に対して良いことしてくれる、助けてくれるという意識が強いのだ」と。安野さんはその点はいかがですか?

安野 自分もそういう文化圏の中で生きてきたので、そのような感覚は自然です。ドラえもんとか鉄腕アトムと聞いて、すっと入ってくる感覚はあります。

アメリカの方は「ターミネーター」などが浮かぶと思うのです。ただ、ターミネーター的な人工知能が出現する可能性もあると思いますが、可能性の高さを考えると「AI自体が暴走して人間に対して悪をなすというよりは、AIを使いこなすAさんとBさんの戦いの中で悲惨なことが起きる」ほうが、例えば国家間の紛争にAIが使われるほうが、たぶん現実的な脅威だと思います。

シンギュラリティで何が起こる?

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ニューズウィーク日本版-YouTube

 その脅威でいうと、いわゆる「シンギュラリティ」、AIが人の知能を超えてしまう時というのが2045年とか、いやいや2030年代には起こるとか、色々な意見があります。安野さんは専門家として、いつ頃起きそうで、何が起こるから、私たちはそれにどう備えておくべきだと思いますか。

安野 色々な意見がありますが、やっぱり直近の成長がすごいですね。IQが全てではないですがわかりやすいベンチマークなのでそれを見てみると、2024年に私が都議選に出た段階ではIQ96くらいでした。

もうすぐGPT-5が出ると言われてますけれど、今回の参院選ではGPT-o3の段階でIQ 136くらいまで来ています。

*米国時間8月7日に発表済み

 ええっ、1年でそんなに違うんですか?

安野 なのでこの1年だけ取ってみても、能力的には別物になっています。そう考えていくと、来年はまた今のAIと別物になっていると思いますし、意外と早く人間の知能を超える瞬間が来ても驚かないというか、むしろそのほうがあり得ると思っています。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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