コラム

「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた

2025年05月02日(金)19時10分


fujimoto2.jpg JAXA宇宙科学研究所所長
藤本正樹(ふじもと・まさき)
1964年大阪生まれ。幼稚園時代をロンドン、中学時代をニューヨークで育つ。東京大学理学部地球物理学科卒、同大学院理学系研究科地球物理学専攻博士課程修了。専門は宇宙プラズマ物理学・惑星系形成論。JAXAでは様々な国際協力プロジェクトに貢献し、特に火星衛星探査計画MMXの立ち上げに尽力。小惑星リュウグウの試料が入ったカプセル(探査機「はやぶさ2」から分離して地球に帰還したもの)の回収隊にも参加した。


 登壇していた他の研究者やJAXA職員は「茜さん、非科学的な噂について、こんなところで取り上げるなんて」と苦笑していました。それは私も想定内でしたが、藤本先生が真剣な表情で「3月31日までなら無視していたけれど、今日、ここに来て女性がたくさんいるのを見て『需要があるのかな』と思い始めた」と答えてくださって。藤本先生は4月1日に宇宙研の新所長になりました。この言葉の真意を改めて教えて下さい。

藤本 「地球防衛」の講演会の参加者の顔ぶれが、いつもの宇宙研のイベントと全く違ったんです。普段、たとえば探査機「はやぶさ」の説明会などは「宇宙の工学・技術の話が好きなおじさん」みたいな人ばかりで、いつも同じ顔ぶれなんです。

でも今回は「お母さん」という感じの女性が目立っていて、「本当に子供の将来を考えて、天体衝突を心配して講演会を聞きに来てくれたんだな」と思いました。ならば、宇宙研は世間の期待に応えなければならないのかな、と。

 では早速、藤本所長から世間に向けて、はっきりと言っていただきましょう。

藤本 今年7月5日に地球に衝突する天体は、世界的に見ても確認されていません! 落下した隕石によって大惨事になるという予言には、科学的な根拠は全くありません!

 「25年7月5日天体衝突説」は21年に出版された漫画が発端で、昨年後半頃から噂が急速に広がりました。藤本所長はいつ頃からこの噂をご存知でしたか?

藤本 本当に全然知らなくて。JAXAのプラネタリーディフェンスチーム長(吉川真・宇宙研准教授)は以前から知っていたらしいのですが、僕のところには報告が上がってこなかったんですよね。アホくさ過ぎて言えなかったんじゃないですか。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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