コラム

「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた

2025年05月02日(金)19時10分
JAXA宇宙研・藤本正樹所長

「地球防衛」がテーマの一般向け講演会に登壇したJAXA宇宙研・藤本正樹所長(4月6日) 筆者撮影

<「天体衝突で大災害が起こる」という噂についてJAXAはここまで静観してきたが、今回のインタビューでついにその見解が示された>

科学ジャーナリスト茜灯里が、気になるトピックスについて関係者に深掘りするインタビュー企画「茜灯里の『底まで知りたい』」。第1回ゲストは、4月1日にJAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙科学研究所長に就任した藤本正樹氏です。

藤本所長はとても気さくな人柄です。筆者は藤本所長の後輩にあたり、同級生には同じ分野の研究者もいるのですが、「若い人の意見もよく聞き、良いと思えばすぐに取り入れる」といった評判が聞こえてきます。このインタビューでも、聞きづらい質問に対してもズバッと答えてくれ、話は大いに盛り上がりました。


【今回のテーマ】2025年7月5日天体衝突説

夢日記を漫画化した『私が見た未来』(朝日ソノラマ・1999年)の表紙に「大災害は2011年3月」と描かれていたことで「東日本大震災を予知した」と注目を集めた作者のたつき諒氏が、21年に『私が見た未来・完全版』(飛鳥新社)を発表。

その中で「本当の大災難は2025年7月にやってくる」「日本とフィリピンの中間地点の海底で何かが破裂し、大津波が発生する」という予知夢を紹介したものが端緒とされる。

書籍内で発生日時が「2025年7月5日午前4時18分」と明示されたため、7月5日説など数々の予言・噂をモチーフにした同名の映画も作成され6月に公開予定。YouTubeではインフルエンサーらが取り上げ、関連動画は1000本以上にのぼり総再生数は1億回を突破。中国・香港などの海外でも来日を控える動きが出るなど影響が広がっている。


◇ ◇ ◇

 JAXAは4月6日に「地球防衛」についての一般向け講演会を開き、「天体衝突からいかに地球を守るのか」についての研究や実践状況、国際的な取り決めの現状などを紹介しました。

その後に開かれた記者向け説明会で、私が「ちまたで話題となっている2025年7月5日に天体衝突で大災害が起こるという噂について、JAXAは静観していますが今後も見解は出さないんですか?」と藤本所長に尋ねたんですよね。そうしたら、「出したほうがいいですか?」と逆に質問されて。

藤本 茜さんが「これは今、世間が一番興味を持っている天体衝突の事案で、何を信じたらいいか分からない人も多いから、日本の宇宙機関であるJAXAがはっきりと『そのような天体は見つかっていません。7月5日衝突説の科学的根拠はありません』と一般向けに見解を出したほうがよい」とおっしゃったので、「そういうものを世間の人は求めているのかもしれない」と思い始めました。

■参考記事:7つのキーワードで学ぶ「プラネタリーディフェンス」 天体衝突から地球を守る活動、その「これまでの成果」とは?

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米・イスラエル首脳、7日会談へ ガザ・イラン情勢協

ビジネス

FRB議長、利下げ前に一段のデータ「待つ」姿勢を再

ワールド

中国、WTO改革で米と対話の用意 「途上国」特権見

ビジネス

米5月求人件数、37.4万件増 関税の先行き不透明
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    未来の戦争に「アイアンマン」が参戦?両手から気流…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story