コラム

「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生時代、物理の道選んだのは「変な先生」の影響──野村泰紀の人生史

2025年12月29日(月)11時15分
野村泰紀

独占インタビューに応じた野村泰紀氏(10月7日) TOMOHIRO SAWADA-NEWSWEEK JAPAN

<テニスに明け暮れ「人生とは全て根性」と学んだという中高時代、物理の道を選んだきっかけ、渡米後の物理漬けの日々、トランプ政権下の研究環境など──現在メディアから引っ張りだこの理論物理学者・野村氏の半生について聞き、その人となりに迫る>

20代で世界的な評価を得るような理論物理学者は、果たして子供の頃から勉強一辺倒の「サイエンス少年」だったのでしょうか。

最近、「難しい物理学を分かりやすく解説してくれる先生と言えば、この人」と、多くの視聴者に支持されているカリフォルニア大学バークレー校の野村泰紀教授。熱意あふれる話しぶりと、生真面目すぎない愛嬌のあるキャラクターで時の人となっています。

とはいえ、野村氏はメディアの場では「物理の解説」を求められることがほとんどで、自身の半生がクローズアップされる機会は稀です。「高校時代の部活で『人生は根性だ』と学んだ」「大学時代は『酒とテニス』の生活だった」など、想像以上に熱血でやんちゃな学生時代を、この記事でのぞいてみませんか。

さらに、20代でアメリカに渡り、永住権を持ち大学で研究室を運営する野村氏ならではの「トランプ政権下での外国人研究者の思い」も紹介します。

「最新の宇宙論」や「根源を解き明かすことへの情熱」について掘り下げたインタビュー前編に続き、後編は野村氏のこれまでの半生を豊富なエピソードとともに振り返ってもらいつつ、「大統領交代で激変したアメリカの研究環境」や「AIは理論物理学者に取って代わることはできるか」について真摯に思いを語っていただきました。


【今回のテーマ】

茨城県で自然に触れていた小学生時代、ズボンの太さで喧嘩したこともある中学時代、「人生は根性だ」と学んだ高校時代、酒とテニスの大学時代から若き天才としてアメリカで研究者として花開くまでなど、自身が語る半生を通して野村氏の人となりに迫る。

さらに「トランプ政権下での研究」「AIは理論物理学者になれるか」など研究者を取り巻く最新の状況や、「若手研究者へのアドバイス」「今後の生き方」など研究や未来に関する展望についても紹介する。

この対談を動画で見る

茨城で過ごした小学生時代

 野村先生がメディアに登場されるときは「分かりやすく物理の話をしてください!」という依頼が多いと思うのですが、先生のキャラクターに触れて「野村先生自身のこれまでの歩みや人となりをもっと知りたい!」と思っている読者や視聴者も多いと思います。そのあたりについても深掘りしてよいですか。

野村 大したことは言えないと思いますよ。まあでも、あったことを言うしかないですね。

 少年時代で印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

野村 僕は小学校の6年間、父親の仕事の関係で茨城県にいたんです。父はずっと神奈川県に勤めてて、横浜市の外れの方に家を買った瞬間、転勤の辞令が出て茨城県勤務になったそうです。

で、行き先は茨城県の中でも郡。市ではなくて町だったためか、周りはずっと田んぼでした。ちっちゃい川が流れていて、クワガタとかもいました。

そうだ! 1回玉虫取ったことがあったんです。もうね、玉虫ってすごいんですよ。こう、ちょっと傾きを変えると本当に色が変わっていくんです。

その玉虫は生きていたんですよ。でも、いじってるうちになんか亡くなっちゃったんです。それで近所のおばちゃん、たぶん今からしたらお姉さんくらいだと思いますけど、に「これが玉虫だよ」と見せたら「うわ、むっちゃ綺麗」とは言ってくれたんですけれど、「これ生きていた。本物なんだ」と僕が言っても信じてくれなくて。

「嘘でしょ。作りもんでしょ」「違う、違う。これ本当に動いていたんだ」とか言って、すごく悔しかったんです。今ちょっと思い出しちゃいました。

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筆者と野村氏 ニューズウィーク日本版-YouTube

 当時から自然科学が好きな物理少年だったのですか。

野村 川でザリガニを取ったりヤゴがいたりと、自然には触れてました。ただ、それが直接(物理学者になったことに)繋がったかどうかは分からないです。

「人生とは根性」と学んだ中高時代

 そうして小学生時代を終えて中学生になると、数学や理科の得意な人、苦手な人ってはっきりしてくるじゃないですか。先生はやっぱり、その頃から数学とか物理に興味を持ったり得意だったりしたのですか。

野村 「自分はサイエンス少年ではなかった」と思っていたんですけれど、今、思い返すと中学の時にブルーバックスとかを興味を持って読んでもいました。

 一般向けだけど踏み込んだ内容が人気の科学新書シリーズですね。中学生にはちょっと難しいかもしれません。

野村 とは言ってもずっと本を読んでるような少年ではなくて。たとえば、中学は横浜に移ったのですが、部活はテニスでした。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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