コラム

ノーベル平和賞のヤジディ教徒の女性が、ISISの「性奴隷」にされた地獄の日々

2018年10月13日(土)16時00分

2014年8月、ISISがコチョを含むシンジャール地方のヤジディ教徒の村々を侵略した。コチョを包囲したISISは村人にイスラム教への改宗を命じたが、ヤジディたちはそれを拒否。ISISは男性と老いた女性のすべてを処刑し、子供と若い女性を拘束した。男子を処刑せずに拘束したのは、洗脳してISISの戦士に育てることができるからだ。

21歳のナディア・ムラドは、この日、母親と6人の兄弟を殺され、故郷から連れ去られた。

ほかの若い未婚の女性たちとバスに乗せられたムラドは、旅の途中でISISの戦士から体を触られ、ついに耐えられなくなって叫び始めた。その罰として暴力を振るわれたあげくに「おまえたちはサバヤになるのだ」と知らされた。サバヤ(単数はSabiyyaで複数はSabaya)とは、人身売買される性奴隷の女性のことだ。

そのときようやくムラドはこう理解した。

「ヤジディの女は異教徒であり、過激派によるコーランの解釈では、奴隷をレイプするのは罪業ではないのだ。私たちは新たに採用する兵士をひきつけるために使われ、忠誠心や良い行いへの褒美としてたらい回しにされる。それが、このバスに乗っている私たち全員を待ち構えている運命だ。私たちはもはや人間ではない。私たちは、サバヤなのだ」

シンジャール地方の侵略に先立って、ISISは兵士の採用と教育のためのパンフレットを作っていた。これはコーランを解釈したものだが、世界中のイスラム教指導者たちが禁じている類の解釈だ。

またイスラム教では、結婚していない男女が接触することは基本的に禁じられているし、イスラム教徒の女性は人間として尊重しなければならない。けれども、ヤジディの女性は人間ではないのでレイプしても罪にはならない、と言うのだ。これは、結婚前に女性と性交渉ができないイスラム教の若い男性にとっては魅力的な就職の恩恵だった。

ムラドが繰り返し伝えているのは、「ISISによるレイプは武力紛争の混乱で偶発的に発生したものではない。計画的なものだ」ということだ。

実際に、ISISがガイドラインとして作った『捕虜と奴隷にするときの問答集』というタイトルのパンフレットには次のように詳細にわたるレイプのQ&Aがあった。

Q:思春期に達していない女の奴隷と性交するのは許容されるか?
A:性交にふさわしければ、女の奴隷が思春期に達していなくても許容される。
Q:女の捕虜を売ることは許容されるか?
A:女の捕虜と奴隷を売ったり、買ったり、贈り物として与えることは許容される。なぜなら、それらは単に所有物だからだ。

プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

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