コラム

企業を成長させる最高のマネジメントは「Radical Candor(徹底した率直さ)」

2017年08月08日(火)15時30分

キムには「人を侮辱するほうが、モチベーションが上がる」と信じていたひどい上司がいた。そんな経験があるので、自分がソフトウエアの会社を起業したとき、社員が仕事とお互いを愛せるような環境を作ろうとした。けれども、予期しない失敗をした。

「良い人だけれど、仕事ができない」というタイプの部下に率直にそれを伝えることができず、最終的に解雇するしかなくなったのだ。遠慮して「ズボンのジッパーが開いてますよ」と言ってあげなかったケースだ。

長年の体験でキムが辿り着いた結論は、最良のマネジメント・スタイルが「Radical Candor(徹底した率直さ)」だということだ。つまり、シェリルのような率直さだ。

わかりやすくするために、キムは2つの軸を使って説明している。

radicalcandor.jpg

From radicalcandor.com

縦軸はcare personally(相手のことを個人的に思いやる)で、横軸はchallenge directly(率直に批判する/異議を唱える)だ。

部下を侮辱するキムの昔の男性上司は、相手への思いやりがまったくない、ただの攻撃なので「Obnoxious Aggression:不快な攻撃性」の範疇に入る。

そんな上司になりたくなくて、仕事ができない部下に問題を伝えて指導することができなかった過去のキムは、相手が必要としている批判や提言ができなかった「Ruinous Empathy : ダメージを与える共感」のカテゴリだ。

【参考記事】「なんちゃって」日本食ブームをビジネスチャンスに

ことに職場を破壊するのが「Manipulative Insincerity : 操作的な不誠意」だ。

キムの元同僚のネドは、自分の自信のなさを隠すために、公の場で他人を攻撃的にこき下ろす態度に出た。これは「Obnoxious Aggression:不快な攻撃性」だ。

しかし、キムを含めた同僚たちはネドを止めなかった。後で個人的に問題を指摘して改善を求める者もいなかったので、ネドは学ぶ機会がなく、攻撃性は悪化した。

キムがネドに何も言わなかったのは、「ネドはろくでなし(asshole)だから話しても仕方ない」と最初から見捨てていたからだ。その自分の態度が「Manipulative Insincerity : 操作的な不誠意」なのだとキムは反省する。

「Radical Candor徹底した率直さ」とは、相手のことを思いやりつつ、必要なことを率直に伝えることだ。

簡単なようだが、「Radical Candor」を実際に行うのはなかなか難しい。

プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英競争当局、米グーグルの検索サービス調査へ

ワールド

マスク・ベゾス・ザッカーバーグ3氏、トランプ氏大統

ワールド

米国務長官、トランプ次期政権に引き継ぐガザ戦後計画

ワールド

米クリフス、USスチール買収へ80億ドル確保─CE
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン」がSNSで大反響...ヘンリー王子の「大惨敗ぶり」が際立つ結果に
  • 4
    「日本は中国より悪」──米クリフス、同業とUSスチ…
  • 5
    日鉄はUSスチール買収禁止に対して正々堂々、訴訟で…
  • 6
    ロシア軍高官の車を、ウクライナ自爆ドローンが急襲.…
  • 7
    トランスジェンダーを抹消か...トランプ政権、気候変…
  • 8
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 9
    テイラー・スウィフトの「ダンス動画」が話題...「こ…
  • 10
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分からなくなったペットの姿にネット爆笑【2024年の衝撃記事 5選】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 6
    ロシア兵を「射殺」...相次ぐ北朝鮮兵の誤射 退却も…
  • 7
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「…
  • 8
    装甲車がロシア兵を轢く決定的瞬間...戦場での衝撃映…
  • 9
    トランプさん、グリーンランドは地図ほど大きくない…
  • 10
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story