コラム

企業を成長させる最高のマネジメントは「Radical Candor(徹底した率直さ)」

2017年08月08日(火)15時30分

著者がこの「Radical Candor」というマネジメント・スタイルについて考えるようになったきっかけは、グーグルに勤務した直後にシェリル・サンドバーグから与えられた非常にダイレクトな意見だった。

社内プレゼンテーションでボスたちに良い印象を与えたと自負していたキムに、シェリルは「um(あの〜、え〜っと)とよく言うのに気付いている?」と尋ねた。

キムは「知ってる」と答えたが、内容さえ良ければそんな些細なことはどうでもいいのに、と感じた。

「緊張するから? スピーチのコーチを紹介してあげましょうか? グーグルが払うから」というシェリルの提案に、キムは「別に緊張なんかしない。ただの口癖だと思うわ」と手で振り払うようなジェスチャーをした。

「あなたの仕草は、私が言っていることを無視しようとしているみたいね」とシェリルは笑った。そして、こう言った。

「どうやら、わかってもらうためには、とても、とても単刀直入になるしかないようね。あなたは、私が知っている中でも最高に優秀なひとりだけれど、umを言い過ぎると頭が悪いみたいに聞こえるのよ」

そして、「朗報は、スピーチ・コーチがumの癖を直すのを手伝ってくれるということ。私には偉大になれる人がわかる。あなたは絶対にこの癖を直せるわ」

【参考記事】高級スーパー「ホールフーズ」を買収したアマゾンの野望とは?

キムはそれまで何十年も人前でスピーチをしてきたのだが、それまで誰ひとりとしてこの口癖を指摘してくれる人はいなかった。キムは以前にイベントの講演に「これまでのキャリアをずっとズボンのジッパーを開けたまま歩きまわっていたようなもの。なぜ誰も言ってくれなかったのか」とジョークを言ったが、相手の心を傷つけてはいけないという周囲の思いやりがかえってアダになるところが似ている。

シェリルとキムはハーバード大学ビジネススクールの同級生だったということもあり、すでに信頼する人間関係があった。そして、キムのことをシェリルは個人的に思いやっていた。そのうえで、「あなたは、ここを直せば向上できる」とチャレンジしたわけだ。

でも、職場でこれをしてくれるボスはほとんどいない(キムは「ボス」という言葉を気に入って使っている)。

プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

維新が自民に政策提示、企業献金廃止など12項目 1

ワールド

イスラエル、ガザ境界ラファ検問所開放へ調整 人の移

ビジネス

仏ペルノ・リカール、7─9月は減収 米中が低迷

ビジネス

ネスレ、1万6000人削減へ 第3四半期は予想上回
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇跡の成長をもたらしたフレキシキュリティーとは
  • 4
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 9
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 10
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story