コラム

ついに行われた米国サイバー軍の昇格 自衛隊はついていけるのか

2018年05月10日(木)16時30分

サイバー軍司令官に就任したポール・M・ナカソネ Aaron P. Bernstein- REUTERS

<米国のサイバー軍の統合軍への昇格が発表された。日米同盟下で自衛隊はついていけるか>

日本のゴールデンウィークのさなか、米国のサイバー軍(CYBERCOM)司令官で国家安全保障局(NSA)の長官を兼任するマイク・S・ロジャーズが退任し、第三代のサイバー軍司令官として日系のポール・M・ナカソネが就任したと米国防総省が発表した

司令官の交代式でパトリック・シャナハン国防副長官は、「1000年以上もの間、軍は陸と海で支配を競ってきた。直近の100年間は、我々は空を支配してきた。今日、我々は新しい時代の夜明けに立っており、戦争が性質を変えるという現実に直面している。戦闘領域としてのサイバースペースと宇宙の登場であり、その重要性は陸、海、空に匹敵する」と述べた。

ロジャーズが二代目のサイバー軍司令官に着任したのは、2013年6月にエドワード・スノーデンがNSAの機密文書を暴露してから1年も経っていない2014年4月だった。それ以来、ロジャーズは、スノーデン問題の対処に加え、サイバー軍の存在の確立、サイバー軍とNSAとの関係の整理、そして、何よりも、増大するサイバーセキュリティのリスクへの対処に取り組んできた。

ロジャーズより4歳若いナカソネ陸軍大将は、ミネソタ州出身の日系三世で、陸軍のサイバー軍からの昇任である。インテリジェンス部門での活動が長い。

格上げされたサイバー軍

司令官の交代と同時にサイバー軍の統合軍への昇格も発表された。

米国にはこれまで九つの統合軍が存在した。米軍というと、陸軍、海軍、空軍、海兵隊が思い浮かぶが、実際の作戦活動においては四軍から必要に応じて出された部隊が統合されることになる。例えば、中東でイラク戦争を戦ったのは中央軍(CENTCOM)であり、東シナ海や南シナ海の問題に対処するのは太平洋軍(PACOM)である。アジアの問題に対処するのは在日米軍や在韓米軍と思いがちだが、組織上これらは太平洋軍の下に位置づけられる。

中央軍と太平洋軍の他に地域別の統合軍としては、北米を管轄する北方軍(NORTHCOM)、中南米を担当する南方軍(SOUTHCOM)、アフリカを担当するアフリカ軍(AFRICOM)、欧州を担当する欧州軍(EUCOM)がある。そして、機能別の統合軍として、核兵器やミサイルを扱う戦略軍(STRATCOM)、特殊作戦を担う特殊作戦軍(SOCOM)、米軍の人員・物資を輸送することを専門にする輸送軍(TRANSCOM)がある。これまでサイバー軍は戦略軍の下に置かれていた。

プロフィール

土屋大洋

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授。国際大学グローバル・コミュニティセンター主任研究員などを経て2011年より現職。主な著書に『サイバーテロ 日米vs.中国』(文春新書、2012年)、『サイバーセキュリティと国際政治』(千倉書房、2015年)、『暴露の世紀 国家を揺るがすサイバーテロリズム』(角川新書、2016年)などがある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=

ビジネス

GM、通期利益予想引き下げ 関税の影響最大50億ド
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story