コラム

サイバーセキュリティ政策をめぐる中国政府の内側

2016年01月21日(木)17時00分

止まらない中国からのサイバー攻撃。中国政府の内側では何が起きているのか・・。Edgar Su-REUTERS

 中国はサイバー攻撃の発信源として常に指をさされる存在である。2015年9月の米中首脳会談でのやりとりも記憶に新しい。

 外からは閉鎖的に見える中国という国では、共産党が全てを計画・指示しているという印象を持ちがちである。しかし、最近の経済の不調を見ても、もはや全てが計画通りに動いていると考えることはできない。市場の大幅な下落を止めるために中国政府が導入した「サーキットブレーカー」もうまく機能せず、導入後4日で撤回してしまった。

党と国家

 日本の政治制度からはわかりにくいが、中国では政府よりも党が上位に置かれている。日本では、与党の党首が総理大臣になることが多いが、党と政府は別組織である。総理大臣は与党を基盤としており、その意向を無視できないとしても、党で決定されたことが最終決定ではない。

 しかし、中国では、中国共産党の中央政治局常務委員会が最高意思決定機関になっている。こうした体制は、「党国体制」といわれ、共産主義体制の国では時々見られる。

 かつての毛沢東や鄧小平のイメージから、現在の習近平もまた独裁者的なイメージでとらえられることもあるが、現在の中国政治は、制度的には集団指導体制になっている。無論、そこには強烈な権力闘争の影響が見られる。習近平政権の前の胡錦濤政権では、さらにその前の江沢民国家主席の影響力を残すため、7名だった中央政治局常務委員会が9名に増員された。2名増員分のひとりが、昨年失脚した周永康で、江沢民寄りとされていた。

 習近平政権になって9名から7名に戻され、習近平は国家主席就任以来、江沢民と胡錦濤の影響力をそぐための権力闘争に力を入れてきた。党や軍の有力者をも対象とした反腐敗運動も、そうした前の政権の有力者たちとの争いという側面が強い。

サイバーセキュリティ政策

 サイバーセキュリティ政策についてはどうか。サイバー攻撃が常に問題となるので、中国共産党が全て指示しているという見方もあるが、内情はそうでもない。中国国内における中国人同士のサイバー攻撃も頻発している。中国政府で使用しているパソコン大半が、サポートの終わったWindows XPを使っていると見られている。脆弱性が至る所に残っている。

プロフィール

土屋大洋

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授。国際大学グローバル・コミュニティセンター主任研究員などを経て2011年より現職。主な著書に『サイバーテロ 日米vs.中国』(文春新書、2012年)、『サイバーセキュリティと国際政治』(千倉書房、2015年)、『暴露の世紀 国家を揺るがすサイバーテロリズム』(角川新書、2016年)などがある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、日本渡航に再警告 「侮辱や暴行で複数の負傷報

ワールド

米ロ高官のウ和平案協議の内容漏えいか、ロシア「交渉

ビジネス

米新規失業保険申請、6000件減の21.6万件 低

ワールド

サルコジ元大統領の有罪確定、仏最高裁 選挙資金違法
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 5
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 6
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 7
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    「世界の砂浜の半分」が今世紀末までに消える...ビー…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 6
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 7
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 8
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story