コラム

日本は「非魅力的」な旅行先...海外の超富裕層がガッカリする理由とは?

2023年06月08日(木)13時50分
石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
新宿

MARCO FERRARIN/GETTY IMAGES

<日本には外国人観光客を楽しませる観光地は多い。だが超富裕層が「カネを落とせない」事態に陥っているのが現状だ>

日本もついに「コロナ後」となったせいか、海外ミュージシャンのコンサートの波が押し寄せている。同時に仕事ではなく日本に遊びに来る有名人も多く、京都や有名ラーメン店での写真などがSNSに載っている。有名外国人にとって日本は、仕事の場としての経済大国だけでなく、遊びに来るのにも魅力的な国になってきたのかもしれない。

そんな様子を見ると皆さんは、日本には外国人を楽しませる観光地や遊び場がたくさんあると思われるかもしれない。確かに神社仏閣は見どころが多いし、飲食店のレベルも高く、ショッピングにも困らない。だが、私の知っている外国人観光客の多くは、観光地以外の遊び場が少ないと言う。特に大人が遊びに行く場所がない。

少し前まで日本人の海外旅行はパッケージ旅行が中心で、朝から分単位で予定が詰め込まれていて、一カ所でも多くの観光地を回れるように日程が組まれていた。そのため夜はぐったり疲れてホテルで寝るだけ、が普通だった。

だが欧米や中東の旅行者は、日本人のように勤勉に観光しない。一カ所の観光地にゆっくり時間を取るし、集合時間を守らない人も多くて、予定を詰め込むのは不可能である。そういう余裕のあるスケジュールのため、外国人観光客は夜になっても元気いっぱいで、夕食後も遊びに出かけたい。だが日本には外国人客が集まって大騒ぎできるような遊び場が少ないようである。

何よりもよく聞くのは、お金はいくらでも出せるのに対応してくれる店やサービスがない、という話だ。夜の東京を空から眺めるヘリコプターサービスやリムジンの送迎サービスを探しても、どこも数が少なく、出払っていて対応できないと言われる。昼食付きの東京湾クルーズも、数日前のリクエストには応じてもらえない。

ある時、富豪一家から1~2カ月間遊びに行きたいから、広くて豪華な一戸建て(邸宅と言うべきだろう)を5軒借りたい、賃料に糸目はつけないから探してほしい、とリクエストを受けたが、見つからなかった。Airbnbでも、東京の短期賃貸向け物件は小さな戸建てしか掲載されていない。私の知り合いのアメリカの別荘は、夏の2カ月間だけ約2000万円で貸せるそうだ。そういう物件が日本では見つからない。

逆に考えれば、今まで日本ではそういった富裕層向けサービスの需要が少なかったということなのだろう。一億総中流と呼ばれた時代もあったし、他国に比べれば貧富の格差もずっと小さかった。だから、金さえあれば何でもできるという風潮が広がらず、2倍の金を払うという外国人客のヘリやリムジン予約を優先させる、などという考えがない。このような国はほかにはあまりない。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国、来年は積極的なマクロ政策推進 習氏表明 25

ワールド

フィンランド、海底ケーブル損傷の疑いで貨物船拿捕 

ビジネス

トランプ・メディア、株主にデジタルトークン配布へ 

ワールド

台湾、警戒態勢維持 中国は演習終了 習氏「台湾統一
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 5
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 8
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 9
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 10
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story