最新記事

トルコ

トルコで警官9000人が停職処分 : クーデター未遂後の言論状況をジャーナリストたちが語る

2017年4月28日(金)19時50分
小林恭子(在英ジャーナリスト)

団結するジャーナリストたち

明るい話題も入れたい。粛清で職を失ったジャーナリストたちが団結し、クルド人が多く住む南東部で取材・リポートしている。このプロジェクトは「ニュースウオッチ(Haber Nobeti)」と呼ばれている。ツイッターでアカウントが閉鎖されたら、別のアカウントを作ることで対抗もできる。国際的な支援も必要だと思う。

web170428.jpg
Haber Nobetiのサイトから

***

会場からの質問の時間となった。

──クーデター未遂事件の実行者は?

オッビタアニ氏:まだ疑問点が多い。公式にはクーデター未遂時間の背後にはギュレン師がいたことになっている。しかし、2010年までエルドアン氏とギュレン師は同志だった。二人の間で対立が発生し、どちらが支配権を握るかの話になった。

ドイツやEUでは、実はエルドアン氏が仕組んだものだったという説がある。(事件は7月15日午後9時頃に発生したが)当日の午後4時頃には警備幹部がクーデターが起きることを知っていたという。少なくとも、エルドアン氏の右腕的存在は知っていたのだ、と。

すぐには誰がクーデターを起こそうとしたのかは分からないだろう。

──なぜエルドアン氏の支持が高いのか。

ハーマン氏:エルドアン氏は過去15年間、権力の座にいる。この間に支持を固めるための非常に強力な機械を作ったのだと思う。プロパガンダや情報操作の方法を向上させた。と言っても、彼が登場する前のトルコは民主主義の天国ではなかったが。

トルコの二つの勢力(注:「軍や司法関係者に多い世俗主義者とその支持者」と「エルドアン氏が党首となる親イスラム政党AKPを支持する人々」)の分断をうまく利用したのだと思う。

──エルドアン氏は当初、世俗主義を重要視すると言っていた。変わったのか?

オッタビアニ氏:改革者の役を演じていただけだと思う。

****

セッションに参加して

何とも気が重くなるセッションであった。開催日は大統領の権限を強化する国民投票の10日前。パネリストに後でどう思うかを聞いてみた。「世論調査では賛成派と支持派が半々だ」、「賛成されたら、さらに締め付けは厳しくなるだろう」という声が出た。

様々な情報が錯綜する中、未遂事件の背後にいたのがギュレン師なのかどうか、今回拘束された人々が本当にギュレン師の関係者なのか、現時点では分からない。

国民投票は賛成派が約51%、反対が約49%で僅差となった。最大都市イスタンブール、首都アンカラ、大都市イズミールでは反対票が上回った。熱狂的なファン層を持つと言われるエルドアン大統領。死刑を復活させたいという発言もしており、50年以上にわたりトルコにとって悲願となってきたEUへの加盟の夢は現時点ではほとんど消えたようだ(しかし、英国内では「それでもトルコを入れることを考慮するべきだ」という政治家もいる。英国自身はブレグジットでEUから抜けてしまうけれども)。

反対勢力を徹底して排除しようとするエルドアン氏。逆に国内に不満の種を募らせるだけのようにも見える。

[執筆者]
小林恭子(在英ジャーナリスト)
英国、欧州のメディア状況、社会・経済・政治事情を各種媒体に寄稿中。新刊『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス(新書)』(共著、洋泉社)

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米テロ対策トップ辞任、イラン戦争支持できず 「切迫

ワールド

イラン外相「ホルムズ混乱は米・イスラエルの攻撃と不

ワールド

米経済、イラン情勢の打撃なし 海峡通航徐々に再開と

ワールド

EXCLUSIVE-イラン新最高指導者、米との緊張
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 5
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 6
    「目のやり場に困る...」グウィネス・パルトロウの「…
  • 7
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    生徒がいない間に...中学教師、教室でしていた「気持…
  • 10
    戦争反対から一変...湾岸諸国が望む「イランの脅威」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 8
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中