コラム

トランプの奇妙な実話が歴史になっていく

2018年01月16日(火)18時38分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)

(c)2018 ROGERS─PITTSBURGH POST─GAZETTE

<北朝鮮と小学生レベルの口げんかを繰り広げるトランプには、作り話よりもばかばかしい実話が多過ぎる。そし当然ながら、どの話も歴史に刻み込まれていく>

You can't make this stuff up(こんな話は作れない)。想像を超えるような、作り話よりもばかばかしい実話に使う表現だ。ドナルド・トランプ大統領にまつわるこんな「作れない話」は多過ぎるため、ここではごく一部を紹介しよう。テーマは「反応」。

まずは一般人だった時代から。2001年9月11日、米同時多発テロで世界貿易センタービルが倒壊したことへのトランプの反応は、「トランプ・ビルがロウアー・マンハッタンで一番高いビルになった!」という不動産自慢だった!

次は大統領候補の時代から。ジュネーブ条約違反である上、情報収集に効果がないとして、オバマ政権が水責めなどの尋問方法を禁じたことに対する反応は、「俺ならやる! 効果がなくてもやるべきだ!」という戦争犯罪再開宣言だった!

そして、大統領の時代から。複数の女性へのセクハラ疑惑を理由にトランプの辞任を呼び掛ける女性議員に対する反応は、その女性議員をネタにしたセクハラ発言だった!

核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の金正恩への反応は、エルトン・ジョンの曲名で彼をけなし、「俺の核ボタンのほうが大きい」と主張する、小学生並みの口げんかだった!

そんな大統領に対する国民の反応もすごい。昨年末の世論調査によると、「トランプ大統領に関して、一番最初に思い浮かぶ単語は」という問いに対して、最多の回答は idiot(バカ)だ。レックス・ティラーソン国務長官でさえトランプを moron(マヌケ)と呼んだことが報じられている。

どれも作り話のような奇妙な実話だ。そして当然ながら、どれも歴史に刻み込まれてしまう。風刺画ではトランプがその作業を止めようとしているが、これも不都合な真実を伝える報道機関を口止めしようとする彼の恒例の反応だ。

ただ、正しく歴史に残すために、1つ補足しよう。上記の国務長官の発言はちょっとしたフェイクニュースだったそうだ。その発言を報じたNBCのリポーターは翌日訂正を出した。どうやらティラーソンはトランプを moron(マヌケ)とは言わなかったらしい。f*cking moron(とんでもないマヌケ)と言っていたそうだ。実に作り話のような実話だ。

本誌2018年1月23日号[最新号]掲載

【ポイント】
I DEMAND THAT YOU CEASE AND DESIST!!!

停止することを求める!
cease も desist もやめる、停止するの意味だが、cease and desist で主に法律用語として使われる


ニューズウィーク日本版のおすすめ記事をLINEでチェック!

linecampaign.png

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は反落、短期過熱感を嫌気 日米交渉へ

ワールド

豪住宅価格は6月も最高更新、利下げ効果で5カ月連続

ビジネス

農業を犠牲にしない、安心して再生産できる環境重要=

ワールド

アングル:アマゾン販売の中国製品がCPI上回る値上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story