コラム

トランプとは対照的だった英雄マケイン(パックン)

2018年09月18日(火)11時00分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)

(c) 2018 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<マケインは2018年大統領選で戦った政敵オバマの「陰謀論」を否定して擁護し、トランプが推進したオバマケア撤廃法案に否決の1票を投じて抵抗した>

ベトナム戦争中の1967年10月。ハノイの上空で米海軍の戦闘機が北ベトナム軍に撃墜された。パイロットは脱出で両腕と右足を折った後、地元の人に銃剣で刺され、肩を砕かれた。そして捕虜収容所で尋問と拷問を受け、栄養不足で体重は50キロを切った。

しかし、彼はただのパイロットじゃない。父も祖父も海軍大将のサラブレッド、ジョン・シドニー・マケイン3世だった! おかげで収容所からの早期解放が許された。でも彼は特別待遇を断り、結局5年半も収容所に残ることになった。

その時期、ドナルド・トランプは大学に行き、学業や健康上の理由で徴兵を免れ、パパの不動産会社でアルバイトしていた。

73 年にマケインは解放されて帰国した。その後は海軍の指揮官、共和党の連邦下院議員、上院議員になる。上院議員として5回再選し、2回大統領候補となった。

その時期、トランプは3回結婚し、6回会社を破産させた。

マケインは政党政治より道徳と責任にこだわる、一匹オオカミ政治家と評価された。民主党のバラク・オバマ前大統領と戦った2008年の大統領選中に支持者が「オバマは信用できない......彼はアラブ人だ」と当時はやっていた陰謀説を口にすると、マケインは「違います。彼は家庭を大事にするいい人。私とは意見が違うけれども米国民だ」と潔く政敵を守った。

その後、トランプは「オバマには出生届がない。あってもイスラム教徒と書いてあるかも」などと言い、陰謀説に加担した。

2016年の大統領選では共和党にトランプの波が押し寄せたが、マケインは乗らなかった。トランプもマケインを「戦争の英雄じゃない。捕まったから英雄視されただけ。私は捕まらなかった人が好き」と蔑視した。選挙後も対立は深まる一方で、トランプが激押ししたオバマケア(医療保険制度改革)撤廃法案をマケインが重い一票で否決。大統領の暴走へのブレーキ役を務めた。

そんなマケインが8月25日に亡くなった。お葬式には共和・民主両党から元大統領のクリントン、ブッシュ、オバマと副大統領3人、両院幹部も駆け付け、人生を国にささげたヒーローに最後のお別れとお礼を告げた。

その時、トランプはゴルフに行っていた。まあ、故人の遺志でお呼びでなかったし。

【ポイント】
I LIKE PEOPLE WHO ARE JOHN McCAIN.

「私はジョン・マケインである人が好き」

MAVERICK HERO SERVED WITH HONOR AND GRACE
栄誉と品位を備えた一匹オオカミのヒーロー

<本誌2018年9月18日号掲載>

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ペトロチャイナ昨年純利益が4.5%減、原油販売価格

ワールド

ロシア石油タンカーがキューバ領海入り、トランプ氏が

ワールド

ASEAN首脳会議、予定通り5月開催 内容は最小限

ビジネス

中東緊迫化、利上げに前向きな意見相次ぐ 基調物価の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のSNS動画が拡散、動物園で一体何が?
  • 4
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 7
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    カタール首相、偶然のカメラアングルのせいで「魔法…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story