コラム

誘惑に打ち勝つ意思決定の方法/disabuse(誤った考えを捨てさせる)

2017年01月17日(火)20時17分

www.ted.comより


【今週のTED Talk動画】The battle between your present and future self
http://www.ted.com/talks/daniel_goldstein_the_battle_between_your_present...

登壇者:ダニエル・ゴールドステイン

 ギリシア神話のオデュッセウスとセイレーン(半人半鳥の海の妖精で、近くを通る船の船員をその甘い歌声で誘惑し、自分の座る岩に座礁させてしまう)の話が、私たちの日々の意思決定とどのような関わりを持っているのだろうか? マイクロソフトの研究所に勤める意思決定専門の研究者ダニエル・ゴールドステイン氏は、この話をTEDトークの冒頭で紹介し、サイレーンの歌をどうしても聴きたい「現在の自分」と高齢まで生き続けることで形作られる「将来の自分」とのバランスの難しさについて語っている。

 彼はこのTEDトークの中でオデュッセウスが使った対策をcommitment device(背水の陣)の一種であると説明し、誘惑に抵抗するためのその方法に潜む問題点を指摘している。彼はまた、いま研究している「将来の自分」のニーズを取り入れる方法についても紹介している。ダイエットにしても貯金を増やすにしても、理想的な自分の将来像を描きたいと思っている人にとって、とても参考になる内容となっている。

【参考記事】良い人生とは何か、ハーバード75年間の研究の成果/wildest dreams(無謀な夢)

キーフレーズ解説

disabuse
(人に誤った考えを)捨てさせる
(動画15:35より)

 人が何か間違ったアイデアや誤解、迷いなどを持っている時に、その人をそのようなしがらみから解放するという意味で使われます。文章で使う際には「誰を」(普通は人、特定の人や世間一般の人々)と「何から」(考えや信念)disabuseするのかを明確にする必要があるので、それを示す言葉が必ず同じ文章の中に存在します。

 このTEDトークでは、ゴールドステイン氏がコンピューターグラフィックによって老化の加工を施された同僚の写真を聴衆に見せた後、そのイメージをdisabuseすべきだ、要するに、皆がそれを忘れるようにしなければならないと冗談っぽく話しています。

 ここでいくつかこの表現を用いた例を紹介します:

●Studying history should disabuse anyone of the idea that there are upsides to war.
(歴史を勉強することによって、戦争には良い側面があるという考えから誰もが解放されるだろう)

●The teacher tried to disabuse his students of their stereotypes about poor people.
(その先生は生徒たちが貧しい人々に対する固定観念を捨て去るよう努力した)

●The movie's goal is to disabuse people of the misunderstanding that their efforts don't matter.
(自分の努力は意味がないという誤解から人々を解放することがその映画の狙いだ)

【参考記事】現代人の時間管理は根本的に間違っている/I question(疑問を持つ)

プロフィール

ロッシェル・カップ

Rochelle Kopp 異文化コミュニケ−ション、グローバル人材育成、そして人事管理を専門とする経営コンサルタント。日本の多国籍企業の海外進出や海外企業の日本拠点をサポートするジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社の創立者兼社長。イェ−ル大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営大学院修了(MBA)。『シリコンバレーの英語――スタートアップ天国のしくみ』(IBC出版)、『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』(クロスメディア・パブリッシング)、『反省しないアメリカ人をあつかう方法34』(アルク)など著書多数。最新刊は『日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法』(共著、クロスメディア・パブリッシング)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:軽飛行機で中国軍艦のデータ収集、台湾企業

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談 W杯抽

ワールド

プーチン氏と米特使の会談「真に友好的」=ロシア大統

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 8
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story