コラム

環境活動家のロバート・ケネディJr.は本当にマックを食べたのか?

2024年11月20日(水)14時40分
トランプの広報担当者が投稿した機内でのマクドナルドの食事の写真

トランプの広報担当者が投稿した機内でのマクドナルドの食事の写真(右がケネディJr.) Margo Martin/X 

<食品についても徹底した思想を持ち、ファストフードは「毒」という発言もしていたが......>

ドナルド・トランプ次期大統領は、プロレスのイベントに参加するために11月16日にプライベート・ジェットでニューヨークに出張しました。その際には、次期政権で新設される「政府効率化省(DOGE)」の責任者に指名されたイーロン・マスク氏、長男のドン・ジュニア氏、更に次期厚生長官に指名されているロバート・F・ケネディJr.(RFKジュニア)氏が同行していました。


 

この4人については、機内で一緒にマクドナルドのハンバーガーなどで食事をしている写真が公開されています。どうしてマクドナルドなのかというと、これはトランプ派の選挙運動において、庶民のカルチャーの記号として政治的な意味を持っていたからです。

元々、トランプ氏はマクドナルドやKFCなど、アメリカでは「ジャンクフード」などと揶揄されることもあるファストフードが「大好きだ」と公言していました。ところが、今回の選挙戦では民主党のカマラ・ハリス候補が「若い時にマクドナルドでバイトをしたことがある」と庶民性をアピールしたので、お株を奪われた格好となりました。

怒ったトランプ氏は、ハリス氏のバイト経験を「フェイクだ」と一方的に否定したばかりか、すぐに手配をして、激戦州のペンシルベニアのマクドナルドで、自分が実際に働く様子を取材させたのです。直後は、余りにも見え透いたパフォーマンスという見方が多かったのですが、結果的にこれは有権者の心理に刺さったのでした。「そこまでやるか」「さすが仕事が早い」「やっぱり庶民の味方だ」というような感覚です。

機上での奇妙な写真

以降、トランプ氏は「マクドナルド好き」のイメージを、自分が「庶民派」であることの象徴として、改めて意識しているのだと思います。今回の機上での4人の写真も、その一環です。

この中で、少し奇妙なのはRFKジュニア氏です。この人は、元々が環境活動家で、それもかなり徹底した思想を軸に、世界を駆け回って活動を続けてきた人です。今回は、トランプ本人よりもむしろトランプ派に根強い「ワクチン陰謀論」について、そもそもの発信をしてきた存在として、陣営に迎えられた経緯があります。その際に、RFKジュニア氏は持論である「化石燃料依存への反対」は封印し、トランプ流の環境政策には口を出さないという条件で陣営入りしたと言われています。

それはともかく、RFKジュニア氏は食の安全についても、徹底した思想を持っているようです。基本的には大企業による食品加工を否定、自分も一切の加工食品は口にしないというのがライフスタイルになっています。過去の言動の中には、ファストフードは「毒である」という発言もしていました。

そのRFKジュニア氏が、マクドナルドの商品を前にポーズを決めているというのは、何とも違和感のある写真と言えます。実際に、今回の撮影の前には、トランプ本人から「極端な食生活」をディスられていたそうです。それはともかく、さすがのトランプも、嫌がるRFKジュニア氏に「マックのバーガー」を無理に食べさせることはしなかったでしょう。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

世界インフレ動向はまちまち、関税の影響にばらつき=

ビジネス

FRB、入手可能な情報に基づき政策を判断=シカゴ連

ビジネス

米国株式市場=主要3指数最高値、ハイテク株が高い 

ビジネス

NY外為市場=ドルが対ユーロ・円で上昇、政府閉鎖の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    AI就職氷河期が米Z世代を直撃している
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    琥珀に閉じ込められた「昆虫の化石」を大量発見...1…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story