コラム

保守派から即座に包囲網が敷かれた、トランプの出馬宣言

2022年11月17日(木)19時00分

事前の宣言通り、大統領選への出馬を表明したトランプだったが Octavio Jones-REUTERS

<かつてトランプを持てはやした保守系メディアも、今回の出馬宣言には冷ややかな態度>

11月15日(火)の夜、ドナルド・トランプ前大統領は、自身が所有するフロリダ州のリゾート「マール・ア・ラーゴ」で会見し、2024年の大統領選に出馬すると表明しました。通常、現職でもない限り、大統領候補というのは最初に出馬へ向けての「調査委員会」を設置して、その後に正式な立候補に臨むことが多いのですが、今回はいきなり正式な出馬表明となっています。

この会見ですが、アメリカではそれほど大きなインパクトをもって受け止められてはいません。まず、リベラルなメディア、例えば3大ネットワークの1つであるNBCでは、翌朝のニュース番組「Today」でトップ扱いでしたが、演説の内容における事実誤認を指摘するなど冷ややかでした。

では、保守系のメディアや共和党の動向はどうかというと、こちらはもっと露骨に「トランプ包囲網」を敷いた格好になっています。

まず、注目されるのがペンス前副大統領です。ペンス氏は、このトランプの出馬宣言の行われた15日に著書を刊行しています。『So Help Me God(神よ助け給え)』という意味深長なタイトルの自伝ですが、その宣伝を兼ねて、翌朝にはテレビに出演しています。

ペンスから三下り半

その番組は 「Fox and Friends」 というFOXニュースの朝のトークショーで、ここでペンス氏はハッキリと「共和党にはニュースタイルのリーダーシップが必要」と述べて、2024年の大統領予備選においてはトランプを支持しないと明言しました。

ペンス氏の立場は明確で、2016年にはトランプが「ニュータイプのリーダー」として求められていた、従って自分はトランプとともに闘ったというのです。その上で、自分たちがトランプ政権を通じて実現した政策は、正しかったとしています。けれども、選挙に敗北したのにその結果を認めず暴力を扇動したトランプには、自分は一線を画したとしています。

一時期は、トランプへの支持を問われると口を濁していたペンスですが、今年に入ってからは、かなり明確に2020年の選挙結果をめぐるトランプの態度への批判をするようになっていました。また、例えばアリゾナ州では、トランプの擁立した知事候補に対して、共和党の本流の候補を応援してトランプと真っ向から対立した予備選を戦ってもいます。(結局、予備選ではトランプ派が勝利しましたが、本選では落選しています)

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン氏「原発周辺への攻撃」を非難、ウクライナ原

ワールド

西側との対立、冷戦でなく「激しい」戦い ロシア外務

ワールド

スウェーデン首相、ウクライナ大統領と戦闘機供与巡り

ワールド

プーチン氏、ロは「張り子の虎」に反発 欧州が挑発な
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    AI就職氷河期が米Z世代を直撃している
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    琥珀に閉じ込められた「昆虫の化石」を大量発見...1…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story