コラム

ハリケーン被災で政敵と握手、バイデンの成算は?

2022年10月06日(木)18時40分

ハリケーンが「外れた」北方のタンパ都市圏のほうがむしろ避難が徹底していて、南のリー郡では逃げ遅れが出たことに関して、デサントス知事は「全国メディアはタンパ上陸説を好んでいたようだ」などとメディアの責任を示唆して対抗する構えでした。ただし、ハリケーンの進路が予報より急に南にそれたのが被災の原因という見方に立つのであれば、当局の対応を責めるのは酷という声もあります。バイデンがこのタイミングで、このストーリーに乗って知事への全面批判をしなかったのは、評価はできます。

では、今回の「政敵同士の握手」は双方にとって損得はどうだったのかというと、どう考えてもデサントスの勝ちと思われます。まず、知事選も、また同じように注目されているフロリダの上院選も、支持率では共和党がリードしています。バイデンが喧嘩を売らなかったことで、デサントスが選挙戦での優勢を維持していく可能性は濃厚だからです。

一方でバイデンの側は、政争から「逃げた」だけではありません。実はリー郡の被災者は、豪華な砂州のリゾートに住む富裕層だけではありません。本土の側にも多くの被災者がおり、黒人やキューバ系など被災で経済的困窮に追い込まれる層は膨大だと考えられます。そして、小さな政府と保守ポピュリズムを徹底しているデサントス路線では、彼らの救済は十分行き渡らないことが予想されます。にもかかわらず、被災直後の段階でバイデンが「論戦から逃げた」となれば、その弱腰姿勢はいずれ問題になる可能性は十分にあると思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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