コラム

五輪開催か中止か、そのコストをどうするのか......重大問題の議論が見えない組織委員会の会長人事

2021年02月19日(金)14時40分

森元会長の後任には橋本聖子氏の就任が決まった Yuichi Yamazaki/Pool/REUTERS

<開催するにしても中止するにしても、そのコスト管理には高いマネジメント力と説明スキルが求められる>

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の会長人事については、どうにも理解し難いものがあります。橋本聖子氏に決定した経緯が「全会一致でした」という報告が「透明性」だというのも社会をバカにした話ですし、そもそも現時点での人事ということであれば、次の2点は外せないと思うからです。

1つ目は、この2021年に東京オリ・パラを開催するのか、しないのかという議論です。なぜならば、この2021年2月末というタイミングにおいて、東京オリ・パラのことを論じるのであれば、この問題は避けて通れません。

現時点では、米国で五輪の独占放映権を持っているNBCですら「日本では世論の80%が開催に反対している」という報道を始めています。また、この夏の首都圏のホテルの予約状況を見れば、旅行業界は「観客を入れた開催」を前提にしたビジネスはほぼ完全に放棄しているように見えます。

それはともかく、昨年の延期の正式決定は3月24日でした。その際の経緯を見れば、開催か中止かを決定するのは国際オリンピック協会(IOC)と日本政府のようです。ですから、今回も水面下ではすでに相当な調整が進んでいると思われます。

その中で、仮に現時点でIOCが十分に理解していない判断材料として、例えば日本での開催は困難と考えざるを得ないような事実があるのなら、包み隠さず伝えるべきです。反対に世界が困難と考えていても、日本としては実は具体的な理由から開催に自信を持っているのであれば、それもストレートに伝える必要があります。

どうなっても国民には負担を強いることに

そんな実務的なことは、実行委の会長が誰になるかによって左右される問題ではないのかもしれません。ですが、仮にIOCが、あるいは日本政府が開催か中止かの判断に難渋しているのであれば、実行委として動く余地はゼロではないと思います。そうであるなら、開催か中止かという瀬戸際の時点での会長人事は、その重たい判断に無関係であるはずはありません。

そして、仮に開催となった場合も、また中止となった場合も国民には負担を強いることになると思います。その場合に、国民と対話する責任は総理、担当大臣、開催都市の首長、そして組織委の会長が担うわけであり、公人として極めて高度な対話能力が要求されます。この開催か中止かという大変にクリティカルな状況の中での人事だという議論が見えないのは、何とも奇妙です。

第2は予算管理です。仮にパンデミック下の開催となれば、様々な追加の支出が発生します。際限ない資金の流出にならないように、厳しいコスト意識が必要になります。一方で、感染対策に失敗すれば大会全体が失敗となりかねません。ですから、明らかに必要な追加予算であれば、しっかり予算を引っ張ってくることも必要です。

それ以前の問題として、パンデミック下の開催となれば、経済効果は当初見込みよりは相当に小さくなるわけですから、日本経済として、また財政ということでもコスト管理には厳しさが必要となってきます。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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