コラム

五輪開催か中止か、そのコストをどうするのか......重大問題の議論が見えない組織委員会の会長人事

2021年02月19日(金)14時40分

一方で、中止となった場合にもカネはかかります。残念ながらムダになった設備、キャンセルできない費用、入場券の払い戻し、放映権料やスポンサー対応など、様々な問題が出ると思います。その場合に、結果的に開催ができなかった大会に対して、公的な資金が追加で投じられるということになれば、世論の目は非常に厳しいものとなるでしょう。

つまり、今回のオリ・パラに関しては、開催するにしても中止するにしても、コストの管理という点で強いマネジメント力が必要ですし、結果的に国民に負担を強いるのであれば、より透明度の高い情報公開が必要となります。そのようなマネジメント力、そして説明するスキルも大切だと思います。しかしながら、そのような観点で選考が行われた形跡もありません。

こんな人事を見ていると、開催か中止かという問題、そしてその場合にどんな追加の負担や費用がかかるかという重大な問題について、結局は透明性のある決定も、情報公開も「する気もない」し、「そもそもできるような組織ではない」という印象が否定できません。

女性理事を増やすのは正しいと思いますし、新たな女性理事がこうした問題にメスを入れてくれるのならそれはいいと思います。そうでないのであれば、ジェンダー比率の問題の前に、開催か中止か、カネはどうかという問題をハッキリさせた方がいいと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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