コラム

米大統領選の行く末を左右するコロナ危機

2020年04月09日(木)16時40分

3月初めのスーパーチューズデーとその翌週の予備選で勝負はほぼ付いていた Lucas Jackson-REUTERS

<事態が早期に収束すれば現職トランプ有利、長期化すれば野党・民主党にとって有利となるはずだが......>

今週8日、10万人と言われる支持者が視聴する中で、バーニー・サンダース候補は動画のライブ配信を通じて、2020年の大統領予備選からの撤退を表明しました。民主党の統一候補を選ぶ予備選では、事実上、ジョー・バイデン候補が圧倒的に優勢となっていましたから、衝撃というほどではありませんが、これで2020年の大統領選をめぐる動きが大きく変化したのは事実だと思います。

そもそも、3月3日のスーパーチューズデー、その翌週のミニチューズデーで、バイデン候補が圧勝した時点で、予備選の勢いはほぼ勝負が付いた感じになっていました。3月10日の時点では、15日に両者一騎打ちのテレビ討論は行うが、その後にサンダースは撤退するかもしれない、そんな噂も流れていたぐらいです。

しかしながら、その後は新型コロナウィルスの感染が急拡大する中で、医療制度への関心が高まる一方で、サービス業を中心に多くの失業者が発生。そこで「国民皆保険実現、格差是正」というサンダースの主張には説得力が出ていました。一方で、ニュースがコロナウイルスの問題で埋めつくされる中で、サンダースの撤退声明を出すタイミングが見つからなかったという状況もあると思います。

では、なぜこの4月8日になって発表したのかという点ですが、3つ指摘できると思います。

感染のさなかの予備選継続はもう無理

1つは、コロナ問題の風向きが変わったということです。この日、ニューヨーク州では24時間で779人という死者を出し、クオモ州知事は悲痛な会見を行っていましたが、同時に1日の入院者数、ICU入りした重症者数などは、大きな低下を示しており、増加カーブがフラットになってきていたのです。誰も安心はしていないが、ふと今後のことが気になる、そんなタイミングが初めてやってきた、そこで発表に踏み切ったということはあると思います。

2つ目は、前日のウィスコンシン予備選です。共和党サイドの工作もあって、リアルな投票所に行って投票することを強いられた有権者たちからは、悲痛な声が上がっていました。そこであらためて、コロナ問題を抱えた現状で各州の予備選を継続することはもうムリだという判断が出たのだと思います。

3つ目は、オバマ前大統領の存在です。予備選への関与はしないと言明していたオバマですが、ここ数週間、何度もサンダースと電話会談を行っていたそうです。恐らくはオバマが乗り出すことで、「民主党の一本化調停」がなされたということなのでしょう。

さて、このニュースですが、基本的には好感をもって受け止められています。例えば乱高下している株式市場も、このニュースには反応してダウは高値となっています。また、コロナ一色となっていた各局の夕方のニュースでは、この「サンダース撤退、バイデン一本化」が久々の政治ニュースとして取り上げられていました。

では、今後の政局はどうなるのかというと、そこには1つのパラドックスが待ち構えているのです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

CKハチソンのパナマ子会社、港湾買収巡りマースクに

ワールド

ヒズボラが攻撃停止か、イスラエルはレバノン攻撃継続

ワールド

中国外相が9─10日に北朝鮮訪問、「戦略的対話を強

ワールド

ウクライナ南部の河川輸送要衝に無人機攻撃、施設に被
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 5
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 6
    「王はいらない」800万人デモ トランプ政権への怒り…
  • 7
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 8
    【後編】BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音…
  • 9
    キッチンスポンジ使用の思いがけない環境負荷...マイ…
  • 10
    5日間の寝たきりで髪が...ICUに入院した女性を襲っ…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 4
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 7
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 10
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story