コラム

日本で新型コロナの死亡率が低いのは、なぜなのか?

2020年03月24日(火)19時30分

日本では欧米のような急激な感染拡大にはいたらずに「持ちこたえて」いるが Edgard Garrido-REUTERS

<公衆衛生への国民の意識が高いからか、クラスターの封じ込めに傾注する対策が当たっているからか......>

新型コロナウイルスに関しては、まだまだ分からないことが多いわけです。ですから、3月19日に専門家委員会が表明した、日本は感染拡大の加速にはいたっておらず「持ちこたえて」いるが、「オーバーシュート(爆発的な感染拡大)」の危険はあり、依然として厳しい警戒が必要という指摘は、真剣に受け止めないといけないと思います。

日本の新型コロナ対策に関しては、PCR検査の数が抑制されているという指摘があります。このため今後拡大するかどうかについては、議論があります。ですが、明らかに指摘できるのは、日本の場合は人口当たりの新型コロナの死亡率が非常に低いことです。

中国の場合は湖北省とその他を通算した平均値はほとんど意味がないので除外しますが、その他、現在まで大規模な感染が発生している国や地域の死亡率と比較すると、日本の低さは明らかです。

▼イタリア(人口6055万人、死亡者6077人)人口10万人当たりの死亡者数10.03人
▼スペイン(人口4068万人、死亡者2311人)......5.68人
▼アメリカ・ニューヨーク州(人口1945万人、死亡者118人)......0.61人
▼韓国(人口4818万人、死亡者104人)......0.21人
▼日本(人口1億2653万人、クルーズ船を除く死亡者42人)......0.03人

人口当たりの死亡率が日本はなぜ低いのか、その理由を考えてみます。

まず考えられるのは、日本社会の特徴です。例えば、近年は高齢者が「高齢者のみの世帯」で生活している率が高く、若い世代との接触を遮断するのが容易だということです。例えば、日本の高齢者入居施設の場合は2月の早い段階から家族を含めた入所者以外の訪問を停止して厳格な管理をし、大規模感染は起きていません。また、大家族が比較的残っている地方は人口密度が低く、反対に人口密集地域では2世帯、3世帯の同居は少なくなっていることが理由として上げられます。

他にも、公衆衛生の概念が浸透しているとか、手洗いの習慣、マスク着用など生活様式の特徴も理由になりそうです。漠然と説得力を感じるストーリーですが、例えば同じように高齢者の命を奪う季節性のインフルエンザの場合は、例えばアメリカで毎年1万5000人前後の死亡者を出している一方で、日本は3000から5000の死亡者数で推移しています。そう考えると、社会の特徴だけで説明できるとは思えません。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米株式市場の「ソフトウェアマゲドン」、買い機会か見

ビジネス

ソニーG、純利益3回目の上方修正 メモリー「最低限

ビジネス

独鉱工業受注、12月は予想外の増加 大型受注が寄与

ビジネス

ノボノルディスクの糖尿病薬、大中華圏で初の売上減 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 3
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新世論調査が示すトランプ政権への評価とは
  • 4
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 5
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 6
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 9
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 10
    電気代が下がらない本当の理由――「窓と給湯器」で家…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 7
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story